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平気で「眠らない」日本人が知らない、睡眠不足がもたらす残念な結果働き方の「今」を知る(5/6 ページ)

» 2023年03月29日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

国内各社における勤務間インターバル制度導入事例

 導入率の低いわが国の勤務間インターバルだが、既に導入している企業の事例を見ると、その重要性を実感させられる。下記に7社の事例を紹介する。

本田技研工業

1970年代初頭から「翌日出社時間調整ルール」を設けていたのが本田技研工業(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 わが国において勤務間インターバル制度が努力義務となるはるか前、1970年代初頭から既に類似の「翌日出社時間調整ルール」を設けていたのが本田技研工業だ。22時を超える突発的な残業の際に、労働者の休息時間を確保するために設けられたもので、工場勤務の場合は9時間半〜11時間、本社勤務であれば12時間のインターバル確保が義務付けられている。同社の定時は9時始業であるが、インターバル確保によって9時以降の出社となっても9時から実際の出社時間までの間は勤務したものと見なされることになっている。

KDDI

 本田技研工業の勤務間インターバルはあくまでイレギュラーな事態への対応策として設けられたものだが、就業規則に明記された全社規模の導入ケースの先駆けは、15年に実施がスタートしたKDDIであろう。最低9時間(導入当初は8時間)のインターバル確保が義務付けられているとともに、健康管理指標として、ひと月のうち11日以上は11時間というラインを設け、健康管理にも注力。結果として、従前の労働時間基準では捕捉できていなかったピンポイントでの過重労働を見いだすことができるようになった。

住友林業

 17年に11時間の勤務間インターバル制度を導入。休息時間が始業時刻またはコアタイムに及ぶ場合は、勤務を免除して働いたものと見なすとともに、時間あたりの生産性評価も導入した。結果として21年度には、13年度比平均所定外労働時間削減率が33%減と、大幅な残業時間の削減につながっている。

アサヒグループホールディングス

 18年から11時間の勤務間インターバル制度を導入。それまでの「長く働いていることが偉い」という状態から「限られた時間の中で結果を出す、生産性を上げる」という形にするため、従業員の意識を高める風土づくりに注力。同時に勤務管理システムも改修し、勤怠入力のタイミングで、インターバル時間の順守状況を確認することができるように。結果として、18〜20年度の3年間の新卒離職者ゼロ、18〜21年にかけて疾病による求職者数19%減、疾病による欠勤者数は21%減となっている。

サッポロビール

 18年に10時間の勤務間インターバル制度を導入。休息時間中は、営業担当者の携帯電話に顧客が電話しても、代表電話に転送される仕組みを整えた。20年には導入率100%を達成。結果として、17年に2088時間だった年間労働時間を、20年は1944時間にまで減少させることに成功している。

オンワードホールディングス

 19年より朝礼や取締役会のオンライン化、売り上げ・顧客管理のDX化、社内申請の電子化などを平行して業務改善をおこなった。22年に11時間の勤務間インターバル制度を導入。結果、残業時間が65%削減、男性育休取得率が2.5倍増、有休取得率は110%にまで向上。さらに従業員アンケートでは、「幸福度が高まった」との回答が84%、「風通しが良くなった」が100%となる。

※【編集履歴:2023年4月6日16時05分 初出時、オンワードホールディングスの施策実施年の記載に誤りがあったため、修正の上、一部表現を改めました】

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