前回記事(「『すしテロ』よりも注目すべき、外食チェーンの“本気の改革”」)で採り上げた銚子丸・ワタミの2社においても勤務間インターバル制度は導入済であり、それぞれ次のような成果を得ている。
銚子丸では、20年に11時間の勤務間インターバル制度を導入。営業時間短縮、休業日導入が可能となり、営業時間の2万188時間短縮に成功。結果として18年比で総労働時間を5%削減、売り上げ6%増加、1時間あたりの売り上げは15%増加となり、19年比で有給取得率4倍に増加。働きやすい環境が定着し離職率が12%から7%へ大幅減に。
19年より、パート・アルバイト含む全従業員対象に8時間の勤務間インターバル制度を導入。配膳ロボットやテーブル端末導入、マニュアル動画化、勤務時間と作業割り当てをするためのワークスケジュールシステムの全店導入などシステム化を推進し、労働時間が長くなりそうな従業員の上長に注意喚起するなどの対策を講じた。その結果、19年に32.8時間だった平均残業時間は21年には22.9時間まで減少し、22年、23年と2年連続で、経済産業省が定める健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定される。
ここまで見てきたように、睡眠時間と労働生産性、ひいては企業業績や国家のGDPには相関関係がある。
睡眠時間を十分確保して心身ともリフレッシュした状態で日々の仕事に臨める状態を維持できれば、結果的に仕事と育児の両立も可能となり、少子化対策にも寄与することになるだろう。
その推進役となるこども家庭庁が自ら「次の仕事までに一定の休息を設ける勤務間インターバルを達成目標とする」のは筆者としても大賛成だ。この取り組みが、省庁はもちろん一般企業にも広がることを強く期待したい。
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による企業価値向上のコンサルティングと、ブラック企業/ブラック社員にまつわるトラブル解決サポート、レピュテーション改善支援を手掛ける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。
著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『クラウゼヴィッツの「戦争論」に学ぶビジネスの戦略』(青春出版社)
12月1日に新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)を発売。
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