慶應義塾大学の島津明人教授によると、人間の脳が集中力を発揮できるのは「朝目覚めてから13時間以内」であり、集中力の切れた脳は「酒気帯びと同程度」、さらに起床後15時間を過ぎた脳は、「酒酔い運転と同じ」くらいの集中力しか保てない、との研究結果が出ている。すなわち、脳の集中力が成果に直結するホワイトカラーにおいては、残業中の労働生産性が最も低いということになる。
労働科学研究所慢性疲労研究センター長の佐々木司氏によると、人間は一晩眠ったとして、「肉体の疲労は眠りの前半に回復」し、「ストレスは後半に解消する」のだという。すなわち、睡眠時間が少ない状態が慢性的に続くと、精神的なストレスが解消できないまま翌日の仕事に向かうことになり、精神的疲労が蓄積してしまうことになるのだ。
労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター高橋正也氏は、「前日勤務から11時間空けずに働いた場合、翌日や翌々日に、救急搬送や死亡に至るケガが多く起きている」「インターバルが11時間未満の人は、疲労・不安・抑うつ・食欲なし・不眠等のストレス反応と、起床時の疲労感が高い」といった調査結果を発表している。
米国の医師による研究では「睡眠不足は脳の怒りの発生源である扁桃体を活性化させ、扁桃体の活動を抑制する前頭前野の機能を低下させるので、パワハラ・セクハラ・不祥事などのモラル崩壊の引き金となる」と示されている。
さらにフランスの研究では、25年間にわたり約8000人の被験者からデータを集め、521件の認知症の症例を調べた結果として、「中高年の睡眠時間が6時間以下を継続した場合、認知症リスクが3割増」となると関連付けている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング