飲用後のユーザビリティまで意識したボトル開発は、飲料メーカー各社で見られる。キリンビバレッジが2022年9月に発売したミネラルウォーター「キリン 自然が磨いた天然水」の2Lペットボトルは、中央部に指がひっかかる凹みを作って持ちやすくし、捨てる際も手でたやすく平らにつぶせる形状にしている。
使用する段ボールも廃棄のしやすさを意識し、ひもを使わず3枚まとめてロックした状態で廃棄できる作りになっている。
キリンビバレッジが開発したたたみやすく捨てやすい段ボール(同社プレスリリースより)
日本コカ・コーラでは、22年6月にミネラルウォーターブランド「い・ろ・は・す 天然水」のボトルを13年ぶりにリニューアル。横方向からの圧力で容易に平たくたたむことができ、たたんだ後の容積は従来容器より約2割小さくなった。
たたんだ後の容積は従来より約2割小さくなる。資源回収や洗浄などのリサイクル工程がより効率的になった(同社プレスリリースより)
近年、コスパ(コスト・パフォーマンス:費用対効果)ならぬ、スペース活用効率の良さを表す「スぺパ」といった言葉が注目を集める。地価の上昇や建築資材の高騰で、住宅面積の縮小が背景にあるとされる。飲料メーカー各社のかさばらないボトル開発は、部屋の空間を効率よく確保する「スぺパ」志向に合致する。
飲料業界にとどまらない。家具大手のニトリが販売するポケットコイルマットレスは、処分する際に分解しやすい「かんたん分別」構造となっている。同社は利用客の処分時の負担に着目。マットレスのファスナーを開けて、外側のウレタンをはがし、袋のミシン目を破って中のコイルを取り出す――などの作業がわずか6分で済み、簡単に分解できる仕様となっている。同商品は2021年度のグッドデザイン賞を受賞している。
2021年度グッドデザイン賞を受賞したニトリのポケットコイルマットレス(同社プレスリリースより)
このほか、国内ジャム最大手アヲハタが22年8月に販売を始めたボトル容器入りジャム「アヲハタ Spoon Free」は、スプーンを使わず、片手でさっと使える仕様となっている。同社が消費者を対象に行った調査で、「スプーンを使うのが面倒」という声が多く挙がったため、ボトル仕様とすることで不満を解消した。
スプーンを使わず洗い物の手間も減るボトル容器入りジャム「アヲハタ Spoon Free」(同社プレスリリースより)
出版業の主婦の友社からは1月、簡単レシピ本『へとへとでも手を汚さずに今日のおかずがポリ袋でできちゃった!』が出版。洗い物が少なく手も汚れない――といった生活者のニーズに沿ったレシピを全100品紹介している。
主婦の友社はポリ袋でできるレシピ本を出版している(同社プレスリリースより)
使用時のユーザビリティだけでなく、使用後の処分のしやすさや、手間のかからなさまで着目した商品開発は、これからもさまざまな業界で増えていきそうだ。
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