「正義の承認欲求モンスター=カスハラ」に対応するには、どうすればいいのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2023年04月11日 10時02分 公開
[窪田順生ITmedia]

国ぐるみでカスハラ対策

 有名なところでは2017年、大手コールセンターで実習生として勤務していた19歳の女性が、悪質なクレームを受けるなどして、ストレスを理由に自殺してしまった事件だ。

 他にも、デパート婦人服売り場で、購入したコートの交換に訪れた女性客が男性従業員に汚れがあることを指摘されて激高して、ビンタを食らわせたことも。コンビニでは、電子レンジの使い方をめぐり、男性客が店員に熱したラーメンを投げつけたことも。飲食店では、店員のチャーハンの出し方が気に食わないとキレた客が、店員の首をつかんで床に散らばったチャーハンを食べさせようとしたことも。

 このような感情労働の被害者が後を絶たないことで、国ぐるみでカスハラ対策に取り組んだのである。

 その代表が18年の産業安全保健法の改正だ。これによって感情労働者の保護条項が定められ、事業主に対して、カスハラの予防措置をとることが義務付けられたのである。

 ILO(国際労働機関)の定時総会でカスハラも対象にした「ハラスメント禁止条約」が採択されたのは19年なので、かなり先進的と言える。ちなみに、日本ではパワハラやセクハラの法整備はできているが、カスハラに関しては成立の動きもない。

カスハラの実態(出典:連合)
カスハラのきっかけ(出典:連合)

 このような「カスハラ対策先進国」から、われわれは多くのことが学べるのではないか。

 そう聞くと、「いやいや、カスハラがすさまじいのはよく分かったが、日本人と韓国人では文化も国民性も全く違うのだから真似できるものなどないだろ」と思う人もいらっしゃるかもしれない。だが、先ほど紹介した韓国のカスハラ事例を見ると、日本でいつ起きてもおかしくないものではないか。もちろん、日本と韓国は文化や国民性は違う部分はたくさんがあるが、カッと頭に血がのぼって店員に高圧的な態度を取るあたりは、日本と韓国のカスハラ客は瓜二つなのだ。

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