「正義の承認欲求モンスター=カスハラ」に対応するには、どうすればいいのかスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2023年04月11日 10時02分 公開
[窪田順生ITmedia]

 お客様と社員は対等の立場であるべきで、お客様は神様ではありません――。

 秋田県のバス会社のそんな意見広告が注目を集めている。店員や公共交通機関の従業員に対して過度な要求や罵詈雑言を浴びせるカスタマーハラスメントが深刻な社会問題になっているからだ。(関連記事

バス会社が出した意見広告(提供:北羽新報社)

 数年前、SNSでスコットランドのパブの壁に貼ってあったという「お前が受けるサービスの質はお前の態度と俺の気分次第だ」 という張り紙が「日本のサービス業も参考すべき」と話題になったが、いよいよ日本でも「過剰なお客様至上主義」を否定するトレンドが盛り上がってきたのかもしれない。

 ただ、これまでカスハラなどの顧客トラブルに実際に対応してきた立場から言わせていただくと、こういう「店側をリスペクトせよ」という呼びかけは残念ながらほとんど効果がない。

 『企業に上から目線の「カスハラおじさん」が、大量発生しているワケ』の中でも詳しく解説したが、カスハラをする人は基本的に「自分の言っていることは社会一般の常識に照らし合わせても正しい」と固く信じているケースが多い。

秋田県のバス会社の意見広告が注目を集めている(画像はイメージ)

 非常識かつ不誠実な対応をしたのはあくまで店や公共交通機関の従業員側であって、自分はそのひどい対応の被害者であって、それを正してやっている「善意の人」くらいに思っている。というわけで、店側の間違いを正すために良かれと思って注意をしてやっている、という俗にいう「世直し型クレーマー」が多いのだ。

 カスハラ客は自分のことを「偉い」と思っているから暴言を吐くわけではなく、「正しい」と思っているから、相手に「私が悪うございました」と白旗を上げさせるために言動がエスカレートしていく。分かりやすく言えば、「正義の承認欲求モンスター」なのだ。

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