吉野家、ポンパドウルとの協業は、過熱蒸煎したパウダーの用途開発、最終製品化が実現した初の事例だ。今回の取り組みで、課題も見えてきたという。
1つは「輸送コスト」だ。現状はまだ実験中ということもあり、ASTRA FOOD PLANのラボに廃棄玉ねぎを運び、過熱蒸煎をしている。食品端材は傷みやすく、冷蔵または冷凍輸送を行う必要があり、コストが高くついてしまう。
「最終的には、工場の中に過熱蒸煎機を設置し、パウダーを作ってもらうことが理想的です。工場に機械を導入するには、スペースやオペレーションなどを調整する必要があります。今まさに吉野家様でも工場への導入を進めており、実際に工場を訪問して検討しています」(加納代表)
購入となると、「費用」もネックになる。装置は最も安いもので1500万円から。産廃コストを減らしたいというニーズを考えると、高額な設備投資費用が発生することは矛盾が生じる。「現在はサブスクのように、過熱蒸煎機をレンタルで導入してもらえるような仕組み作りも検討している」(加納代表)
加納代表は、「ここからは出口が重要」と話す。さまざまな業界で発生しているかくれフードロスをどう活用していくか、用途開発を強化していく。
例えば、玉ねぎはフレーク状のものをそのままサラダにトッピングしたり、パウダー化してスープやカレーに入れるたり、汎用性が高い。今後は食品メーカーなどと連携し、さまざまな食材の使い道を模索していく。
「過熱蒸煎機があればほとんどの食材を粉末化できますが、粉にするだけではかくれフードロスは削減できません。最終的な売り先があって、商品が出来上がって初めて解決するのです」(加納代表)
また、今回は食品工場の加工過程で発生するかくれフードロスへのアプローチだが、今後は畑で発生する規格外品や生産余剰品への取り組みも強化する姿勢だ。
「事業者であれば工場に1台導入すれば良いのですが、1人の農家の方が過熱蒸煎機を活用するのはなかなか難しいと思います。産地でのフードロスは、自治体などと協力し街や村に1台過熱蒸煎機を導入するといった仕組みを作る必要があると考えています。今後は地域に密着したかくれフードロス削減の仕組み作りも強化していきたいです」(加納代表)
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