ゼンショーホールディングス(HD)が運営する和風チェーン「なか卯」は4月6日から、看板商品「親子丼」(並盛)を490円から450円に値下げした。物価上昇で多くの飲食チェーンが値上げに踏み切る中、異例の値下げとなり大きな話題になった。
一方、牛丼チェーンの吉野家は鶏卵の供給不足の影響で、22年春に期間限定販売した親子丼の販売を見送り、新メニュー「焦がしねぎ焼き鳥丼」を17日に発売した。
「親子丼」の一つをとっても、企業によって大きく対応が分かれた。それぞれ、どのような戦略を描いているのだろうか。
和風チェーン「なか卯」の看板商品「親子丼」。4月6日から並盛を490円から450円に値下げした(公式Webサイトより)
なか卯の親子丼は1994年に発売。「厳選した鶏肉」「こだわり卵」「秘伝のタレ」を用い、手鍋を使って店内で一つずつ手作りする看板商品として、一番人気の商品だ。今回、「自慢の親子丼をより多くの方に楽しんでもらいたい」との思いから価格改定に至ったとゼンショーHDは発表している。
鶏卵の不足や価格高騰で卵を使った料理の販売を休止したり、代替メニューに切り替える飲食店が多い中、あえて「値下げ」に踏み切ったことが大きな話題となった。
一方で、牛丼チェーン吉野家の親子丼は、2012年に販売していたものを10年の開発期間をかけて22年4月に復活販売した、ひと際こだわりがこもった商品だ。なめらかな卵、ぷりっとした鶏肉、シャキっとした玉ねぎ、それぞれの食感を楽しめる吉野家特製たれを使った一品で、多くのファンを獲得した。
10年の開発期間をかけて22年4月に復活販売した吉野家の親子丼。現在は販売を終了している(公式Webサイトより)
吉野家は4月12日、「親子丼の販売も検討しましたが、鶏卵の供給低下により見送らざるを得ず、鳥と好相性のねぎを相棒にした『焦がしねぎ焼き鳥丼』を販売することとなりました」と発表した。
同じ親子丼で生まれた両社の分かれ道。それぞれの販売戦略を専門家はどう見たのか。企業のマーケティング戦略に詳しい一般社団法人「日本マーケティング・リテラシー協会」代表理事の森田広一さんに話を聞いた。
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