ジャニー喜多川氏ほどではないにしても、報道リスクの高いトップの困った性的行動がある場合、組織としてはどうコントロールをすればよいのでしょうか。決して対岸の火事ではないのです。前述したように、刑法改正でアルコールや睡眠、経済的地位の利用といった具体例も示されるようになりますので、告発リスクはより一層高まるといえます。日ごろ、筆者はトップの表現癖の改善訓練をしているので、性的行動も改善ができるのではないかといった予測をした結果、予防プログラムを発見しました。
性犯罪は再犯率が一般的には高いイメージですが、性犯罪の再犯率について詳細に調査した結果をまとめている犯罪白書(2015年)を調べると、性犯罪再犯率は13.9%。初犯で収束する人の方が多いということになります。窃盗、麻薬、詐欺の再犯と比べて決して再犯率が高いとはいえないことを考えると、適切な更生プログラムで予防ができるということになります。
日本刑事政策研究会の調査によると、性犯罪者は、社会生活には適応できており、性に関する部分のみが逸脱しているとのこと。保護観察所では2006年から「性犯罪者処遇プログラム」が実施されていました。5つのセッションがあり、1)性犯罪はコントロール可能だとする意識を高める、2)性犯罪を是認する誤った考え方を自覚させ認知を変える練習をする、3)自分の衝動をコントロールする、4)被害者の立場に立って考えさせる、5)性犯罪を起こさせないための具体的な行動計画を作成する(タイムアウト法、刺激コントロール法、自己教示法)となっています。
「コントロールが可能だとする意識を高める」。最も大事な第一歩。リスクはゼロにはできませんが、数を減らしたり、ダメージを最小限にしたり、といったコントロールはできるのです。筆者も2001年にリスクマネジメントに出会ってから、コントロールの言葉を胸に刻みました。性的行動も同じ。癖だから治らないと諦めない、思い込まないことが被害を減らし、予防につながるのだと改めて確信しました。
危機管理・広報コンサルタント/有限会社シン取締役社長
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長
東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社所属。2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。以来、企業・団体に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディアトレーニング、メディアリレーションズ、広報人材育成等のコンサルティングサービスを提供。リスクマネジメント研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱、マイクロラーニングとして学習プログラム開発。日本広報学会理事、公共コミュニケーション学会理事歴任。
ヤフーニュース個人:「記者会見や企業のリスクマネジメントに関する解説や分析」
Twitter:@ishikawakeiko
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