飲食店にとって電話対応は大きなコストです。そのため、TableCheck(テーブルチェック)やトレタのような飲食店予約サイトを利用する飲食店が増えています。
客は入店して、オーダーし、食べて飲んで、会計を支払い、退店するだけです。しかし飲食店は、営業前には、食材やおしぼりなどの受け取り、仕込み作業は当然のことながら、テーブルのアレンジやセッティング、事前ミーティングがあります。そこから営業時間となって調理やサービスを行い、営業が終了してからも片付けや振り返りミーティングがあるのです。
電話対応は、もちろん営業時間内の方が大変ですが、営業時間外でも楽ではありません。加えて、誤った情報をもとにして架電されたり、架電してもらいたい時間を指定できなかったりすれば、なおさら困ることは容易に想像できます。
飲食店と客の関係性は、予約から始まります。リピーターでなければ、飲食店にとって唯一の事前情報が予約内容であり、それが客の食体験を左右します。
したがって、予約する際のコミュニケーションが重要です。客が一方的に伝えたいことを伝えれば終わりではありません。客の質問や要望に対して、飲食店から、これではどうか、あれではどうかと提案があります。インターネット予約であっても、飲食店から改めてメールや電話があるので、コミュニケーションが成立しているといえるでしょう。
飲食店は客に最高の食体験をしてもらいたいので、アレルギーや好き嫌いの程度をしっかりと確認します。どれくらいの分量であれば大丈夫か、見た目がダメなだけか、ピューレにすれば食べられるかなど、極めて重要です。シチュエーションも大切で、カップルであれば初デートなのか、記念日なのか、プロポーズなのか、結婚記念日なのかによって、オファーできる内容も異なります。
AIによる一方的で定型的な予約であれば、こういったコミュニケーションがとれません。飲食店と客にとってベストな予約が成立するのは難しいといえます。
誤った店舗情報を掲載し、AIが繰り返し架電するのは、飲食店にとって困ることです。さらに、予約者とコミュニケーションがとれないので、食体験の向上も図れません。
Twitterでオートリザーブについて検索すると、飲食店が投稿したと思われる困惑のツイートが散見されます。
以前に記事を書いてから既に1年半前が経過していますが、飲食店が迷惑を被っていることに対して、残念ながら改善がみられたように思えません。オートリザーブがどこまで飲食業界の声に耳を傾け、どのように飲食店に寄与したいのか、再び疑問が投げかけられます。
グルメジャーナリスト。
1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ブッフェ、フレンチ、鉄板焼、ホテルグルメ、スイーツ、ワインをこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。料理コンクール審査員、講演、プロデュースも多数。
ヤフーニュース個人:「グルメジャーナリスト 東龍」
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