「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで解決? 「子供が出す音」の問題は単純ではない(3/4 ページ)

» 2023年05月28日 08時00分 公開
[櫻井幸雄ITmedia]
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うるさい。と思う人は30デシベル台の音も耐えられない

 そのシニア夫婦は、テレビも点けず、音楽も聴かず、2人で読書を楽しむ生活スタイル。それまで住んでいた木造の一戸建てから、「鉄筋コンクリート造のマンションならば、外の音が聞こえず、静かに暮らせるだろう」とマンションに移り住んだ人たちだった。

 もともと、音に対して敏感だったのである。

 音に対して敏感な人たちは、真上に住んでいる家族に小さな子供がいることを知った。それで、耳をそばだてるように音を探っていたのではないか。

 とはいえ、高齢になると聴力も下がってくるので、本当に足音が聞こえているのかはわからない。が、それでも本人が「うるさい」といえば、対応しなければならない。それが、共同住宅であるマンションの面倒さといえる。

画像はイメージ

 結局、不動産会社の社員たちは騒音測定器を持ち込み、音の大きさを測った。その測定値をレポートにまとめ、騒音が生じているとは認められないと締めくくった。

 このレポートに加え、子供が飛び跳ねることをさせないし、夜間は走ることをさせないことの確約を得て、シニア夫婦は引き下がった。が、「しぶしぶ」だった。

 最後まで納得しなかったのは、数値の解釈だ。

 子供が歩いて測定された騒音は、30デシベル台。昼の住宅地内や図書館内で40デシベル程度とされるので、30デシベル台はほとんど音がないといってよいレベルだ。

 しかし、シニア夫婦は「30デシベルならば静か、と誰が決めたのか」と不満を表した。夫婦は、0デシベルこそ理想の静かさと誤解しているようだった。

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