「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで解決? 「子供が出す音」の問題は単純ではない(4/4 ページ)

» 2023年05月28日 08時00分 公開
[櫻井幸雄ITmedia]
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「なんで我が家が……」転居せざるを得ないケースも

 しぶしぶでも納得してくれるケースはよいが、あくまでも「足音がうるさい」といわれてしまうケースもある。あげくに、エレベーター内で子供がにらみつけられ、泣きながら帰宅することも……。そうなると、転居も考えざるを得ない。

 賃貸ならば、比較的楽に転居できるが、分譲マンションを購入した場合、転居は簡単ではない。中古で高く売れるときならばよいが、値下がりしている時期は、経済的な損失を出しながら、転居することになる。

 「気に入っていたマンションなのに、なんで我が家が……」そんな悔しい思いをしながら、転居を決意した家族も実際にみてきた。

 理不尽なクレームだが、それに反論することで自らにも生じてしまう嫌な気持ち、そして、万一相手が怒ってしまったときに家族に危害が及ぶかもしれない、というリスクを考えれば、さっさと転居し、新しい生活に切り替えたほうがよい。そう判断したためだ。

画像はイメージ

 住宅における騒音問題というと、「大きな音を出す人が原因」と考えられがち。確かに、20世紀までは夜中に騒ぐ人や楽器を演奏する人がいて、近所が迷惑するケースが多かった。

 しかし、今は事情が複雑となり、「うるさい」「はい分かりました」で解決する問題ばかりではない。

 単純に解決しない騒音問題は、それほど多いわけではない。が、一度起こると根が深く、こじれやすい。双方が納得し、円満に解決するために真に役立つ方策が求められている。

 「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで多くの問題が解決するとは思えない。かといって、基準値を定めれば済むということでもない。実際に、工事現場には騒音の基準値が定められているが、基準値内でも「うるさい」という苦情が絶えない。「うるさい」と感じる基準が人によって異なるからだ。

 基準値をどう定めればよいのか……それも簡単ではないのだ。

 政府は、「子供の声は騒音か」というやっかいな問題を解決しようとしている。その行方を注視したい。

著者プロフィール:櫻井 幸雄(さくらい・ゆきお)

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住宅評論家。全国の住宅事情に精通し、現場取材に裏打ちされた正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞で連載コラムを持ち、Yahoo!ニュース「個人」でも住宅コラムを連載中。テレビ出演も多い。『買って得する都心の1LDK』など著書多数。代表作は『不動産の法則 誰も言わなかった買い方、売り方の極意』(ダイヤモンド社)

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