取材に訪れた日、店内には10人弱のスタッフがいた。人気店とはいえ店の規模感にしては多いと思ったら、そのうち半分ほどが修行中の「弟子」だという。「ぼんご」では、おにぎり屋をやりたいという熱量がある人を弟子として受け入れており、近年は若年層の志願者が増えている。その多くは1年ほど修行を積んで、巣立つそうだ。
「私の夢は『おにぎり=ぼんご』にすること。でも、私が今から世界に出ていくのは無理だし、やりたいという人たちに叶えてもらおうと思っています。必ずしも『ぼんご』と同じスタイルを貫く必要はなくて、それぞれの思いを大事にして自分らしい店をつくってもらえたら。ここで何か学べるものがあるなら、どうぞというスタンスです」
「ぼんご」の暖簾(のれん)分けの店を調べると、大田区蒲田の「おにぎり こんが」や新宿三丁目の「おにぎり ぼんこ」など、WebやSNSでいくつもの店が紹介されている。
弟子の存在を通して、「ぼんご」の特徴を持つおにぎりが世間に広がっているものの、これだけ並ぶなら「ぼんご」の店舗を拡大してもいいのではと思う。しかし、「それはしないでしょうね」と右近氏。
「大きくしたら、『ぼんご』じゃなくなっちゃうんですよ。大塚に恩返しをしたいから、他のエリアへの移転もしません。数が売れればいい商売じゃないです。心と心の付き合いだから」
「私は誰かと張り合うつもりはありません。ただ、負けないように努力を積み重ねます。才能はないけど負けず嫌いだから、人の3倍、10倍の努力はしますね。『淡々』と『コツコツ』、この2文字以外に何もないです」
1時間ほどの取材を通じて、店内の空気やおにぎりから右近氏の生き様が伝わった。それらを丸ごとひっくるめて「ぼんご」の魅力であり、並んででも食べたい人が後を絶たない理由なのだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング