「晴海フラッグ」にも? マンション転売ヤーに、昔からおばあちゃんがいる理由(2/4 ページ)

» 2023年05月30日 09時45分 公開
[櫻井幸雄ITmedia]
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新築未入居での転売は許される?

 まず、マンションを新築未入居で転売することは許されるのか……これは、ゲーム機やスニーカーを新品未使用の状態で売ることが許されるのと同様に、可能である。

 「本当は、自分で住むつもりで購入した。しかし、急に親の家を継ぐことが決まったので、未入居のまま売却することにした」というような理由付けができるからだ。

 ただし、一部のマンションは転売できない。それは、5年とか10年の期限を区切った「転売禁止」が付くケースだ。国や都道府県の土地など公共性の高い土地を活用したマンション分譲の場合、土地代が安いので割安に販売されることが多い。その場合、「転売禁止」期間が設けられるマンションがこれまでも複数あった。

 その代表事例として今も不動産業界で語り草になっているのは昭和後期に新大久保駅と高田馬場駅の間で分譲された「西戸山タワーホームズ」だろう。「間違いなく値上がりする」といわれ、購入希望者が殺到。販売パンフレットをもらう行列ができて、3時間待ちに。そのパンフレットが欠品となり、最後はモノクロコピーをまとめたものが渡された。

 パンフレットが簡素だったのは、2008年8月に販売された「シティタワー品川」も同じ。「値上がり間違いなし」のマンションには購入者が殺到し、だからこそ転売禁止や賃貸禁止の期間が設けられ、自己居住専用という条件がつく。

画像はイメージ

 「HARUMI FLAG」の旧・選手村マンションも同様のケースとなるのだが、「転売禁止」の期間は設けられなかった。だから、新築未入居の状態で「中古」として売り出す人がはやくも出ているわけだ。

 「転売禁止」の期間を設けなかったのは、旧・選手村マンションとして4000戸を超える住戸を売り切らなければならず、完売することを第一に考えたためだろう。

 結果的に大人気マンションとなったのだが、販売開始時は購入を躊躇する声もあった。実際、東京五輪の開催が1年延び、同マンションへの入居も1年延びたときに、購入をキャンセルした人が少なからずいた。「このマンションを買ってよいのか」という見方が根強くあったので、確実に売り切るために「転売禁止」を付けなかったと考えられるわけだ。

 これに対し、不動産業界では「この価格で、売れないわけがないだろう」という声があったのも事実。つまり、「転売禁止」を付けるべきだとの意見もあったのだが、今となっては後の祭りである。

 実際に売り出されている物件をみると、新築販売時より3000万円以上高く売り出し価格を設定しているケースが多い。

 これは、希望売却価格なので、そのままの金額で成約するかどうかは分からない。相場が定まっていない時期なので、最初は強気で売値を出している可能性がある。

 それでも、200倍以上の抽選になった住戸もある人気物件なので、買ったときよりも高く売れるのは間違いない。

 では、どんな人が買ってすぐに売り出しているのか。

 潤沢に資金を持っている富裕層?目端の利く転売ヤー?

 いずれの場合も、想像される人物像は男性で、30代か40代のやり手……となりがちだ。

 ところが、不動産の世界には、異なる人物像の転売ヤーが存在する。それは、高齢の女性。じつは、マンションの“おばあちゃん転売ヤー”は昭和時代から人知れず幅をきかせていたのである。

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