おばあちゃん転売ヤーの活動が目立ち始めたのは、昭和の後期。平成バブルが始まる直前だ。平成バブルは「平成」の名が付くとおり、平成元年(1989年)から平成3年(1991年)頃が最盛期。しかし、マンション価格の上昇は昭和の時代から始まっており、「このマンションを買えば、必ず値上がりする」という物件が昭和60年代からいくつも出ていた。
当然、抽選販売となっていたが、儲かりそうなマンションにいくつも申し込みを入れて、当たった住戸を購入。未入居のまま転売するおばあちゃんが目立ったのである。
バブル最盛期、そのような「値上がり必至のマンション」は、少なくとも2倍に、物件によっては10倍まで値上がりした。しかし、おばあちゃん転売ヤーは、そこまでは欲張らず、買ったときよりも1000万円くらい高くなればよしとした。1.2倍とか1.3倍で売ったのである。
未入居での転売なので、居住用財産の売却に関する税金の特例を使うことはできない。譲渡所得に対する高い税金を払うし、売却に関する手数料も発生するのだが、それでも500万円とか600万円は手元に残る。
それで十分と考えるのが、おばあちゃん転売ヤーの特徴だ。当時、話を聞いた高齢のご婦人は「お小遣い稼ぎよ」と笑った。
500万円は「お小遣い」として十分すぎる額と思われるが、バブルで札束の山に埋もれた人たちと比べれば、確かにささやかな儲けだった。
ローリスク・ローリターンで売り抜けるのがおばあちゃん転売ヤーが目指すところ。危ない橋は渡らずに、不動産投資の醍醐味をちょっとだけ味わい、楽しむわけだ。
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