ポキポキ折れる「オルファ」のカッター なぜ刃先の角度が“中途半端”なのか週末に「へえ」な話(2/3 ページ)

» 2023年06月11日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

オルファのカッターが世界標準に

 オルファの人気商品といえば、先ほど紹介した「タッチナイフ」もあるが、代表的なアイテムといえば、刃をポキポキ折って使うカッターである。商品を開発したのは、1956年のこと。創業者の岡田良男氏は印刷会社で働いているときに、紙を切ることが多かった。カミソリの刃をつまんで切っていたわけだが、刃の両端しか使えない。危ないだけでなく、もったいない話でもある。

世界最初の折る刃式カッターナイフ 「オルファ第1号」

 ちょっと話は変わるが、当時、路上にいた靴職人は靴底を削るのにガラスの破片を使っていた。切れ味が鈍ってくると、それを割って再び使う。その姿を見た岡田氏は、進駐軍の米兵がかじっていたチョコレートを思い出したという。「板チョコのように刃に折り筋を入れておき、切れなくなったら、ポキポキと折っていくと1枚の刃で何回も新しい刃を使えるぞ」と。

 刃の長さ、大きさ、厚さ、角度、折り線の深さやピッチなど、試行錯誤の末に完成させたものの、資金も経験もない。大手メーカーに製造を依頼したところ、こんな答えが返ってきた。「刃物は折れたらダメ」「こんなもの、つくっても売れないよ」と。どこも相手にしてくれないのであれば、「自分たちでつくろう」となって、カッターをつくり続けたのだ。

ブラックS型

 その後、国内でじわじわ売れていき、商品は海を渡ることに。欧米を中心に広がっていったが、その一方でニセモノに悩まされる。「大阪で生まれた小さなカッターが売れている」という話を聞けば、ウチもウチもといった感じで、コピー商品が相次いで出てきたのだ。

 「特許を取得していれば、そんな問題は解決するのでは?」などと思われたかもしれない。同社は国内のモノについては取得していたが(商品によって違う)、輸出品については手を打っていなかったのだ。

 よく似た商品が出てくるし、大手メーカーも参入してくるし。となれば「大変だ、大変だ」となってもおかしくはないが、同社の考え方はちょっと違っていたようである。他社が参入するということは、自社の技術が認められたこと。「市場はもっと大きなる」と見込んで、生産量を増やしていったのだ。

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