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なぜマイナカードでトラブルが起きているのか 原因は5つ検証不足(4/5 ページ)

» 2023年06月15日 08時30分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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 システムとしての精度を上げるため、実際のユーザーの一部またはそれに限りなく近い、「システムのことを全く知らない」素人の人たちを多く集めて、カットオーバーの前にしばらく使ってもらう必要がある(「試行」とか「トライアル」などと呼ばれる)。

 開発者が想定していない操作や正規でない処理を素人ユーザーが行っても、ちゃんと「エラー」表示されるのか、とんでもないトラブルにならないか、周辺システムとの間で思わぬ影響を受けないか/及ぼさないか、などを検証するのだ。

 今回のマイナカードで表面化したような人為的ミスによるトラブルの大半は、試行をきちんと行っていればすぐに発現する類だ。発現した不具合の原因を突き止めて、試行期間中に防止策を講ずることができたはずだ。

 今回のマイナカードのシステム開発の主契約者は、そうした「試行」というやり方に慣れていなかったのかもしれない。もしくは今回のような複雑なシステムだと、試行をするとしても幾つもの関係機関と非常に面倒な調整を要するので、試行自体を嫌がる発注者(デジタル庁)の反対論に気おされてしまったのかもしれない。

 しかし、もしかすると開発スケジュールが遅れたために、当初は計画していた試行を省いてしまったか、試行規模(人数×期間)を話にならないほど縮小してしまった可能性も多分にある。

 当初は計画していた試行を省く/大縮小することを、システム開発事業者が自ら提案するとは考えにくい。往々にしてあり得るのは、システム開発のリスクをよく理解していない発注主(この場合はデジタル庁または内閣)の「偉い人」が、無理にでもカットオーバー予定に間に合わせるよう「鶴の一声」で命令するケースだ。

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