経営者の関心事の一つに、人的資本経営があげられるだろう。
上場企業では人的資本開示の義務化が始まり、人事部門を中心に重要課題として対応に追われている。
経営資源の「ヒト、モノ、カネ、情報」のうち、最も伸びしろがあるのが、ヒト資産だ。教育──いわゆるリカレント教育やリスキリングを施して業務の効率化をすれば、社員は創造性を発揮して、新たなビジネスを生んでくれる。そのような可能性の高い資産、資本であるヒトにおカネを投じよう、投資しよう、という流れができあがった。
ヒトの重要性に着目するのは、今に始まったことではない。1980年代には、日本国の人口減少は予測されていた。かのドラッカーもそれを日本の課題として、当時より警笛を鳴らしていた。
人口減少は、そのまま働き手の減少となり、企業は優秀な人材の採用難に陥る。売り手市場となれば、採用する側の企業が選ばれる対象となる。
この流れは、コロナ禍により加速した。労働者は、自己成長ができるのか、働き方の多様性はあるのかを重視する。企業は、さまざまな選択肢を提供しないと選ばれない、採用できない、そして採用しても定着しない──という事態となっている。人的資本経営が重視されるのは、必然で、日本国の本質的な課題であるはずだ。
もっと言えば、働き方改革、健康経営、生産性の向上、働き方の多様化といった人材不足のための方策は、人的資本経営と同じ事象がさまざまな切り口で現れたに違いないのだ。「ヒト、モノ、カネ、情報」で成り立つ経営資源だが、今は「ヒト、ヒト、ヒト、情報」であると言う人もいるくらいだ。
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