それを引き継ぐ形で、次世代セダンとして注目されているのが、アルヴェルに代表される高級乗用ミニバンである。つまり商用車派生ではなく、乗用を前提としたミニバンという文化を生み出したのは日本であり、後にその過程を説明するが、世界に新しいジャンルとして認知されていった。そのジャンルを代表するブランドとなったのがアルヴェルである。
この辺りは異論のある人もいるだろう。クライスラー・ボイジャーや日産プレーリーなど先駆けとなったクルマはアルヴェルより前に存在したが、「ボイジャーのようなクルマ」とか「プレーリーのようなジャンル」という共通認識にまで至ったかと言うと、そうはなっていない。
さらに言えば、日本で言えばホンダ・オデッセイのように、セダンベースでルーフを嵩上げしたモデルは、欧州ではピープルムーバーと呼ばれ、それも1つのジャンルである。
日本では元々、法律上欧州のような速度域での移動はあり得ないので、70年代の終わりから、商用バンの内装に手を入れたレジャービークルがポツポツと現れ始めた。これを加速させたのが1997年に登場した日産の「エルグランド」で、旧来のEセグセダン、例えば「セドリック」や「グロリア」に代わる新時代のプレミアムセダンとして大ヒットした。
これを黙って見ているトヨタではない。得意の後出しジャンケン戦略にものを言わせ、2002年デビューのアルファードでそのマーケットを一網打尽にしてみせた。
さらに、いわゆるハイソカー的セダン、例えばクラウン・アスリートや、セドリック/グロリアのグランツーリスモあたりについたちょいワル系のニーズの受け皿として、08年により意匠のイカツい「ヴェルファイア」を投入して、このクラスでの覇権を固めていった。
本来あくまでも国内戦略車種として登場したこのアルヴェルに、最もビビッドに反応したのは中国マーケットだった。この20年間、中国のモーターショーでは、アルヴェルのコピーモデルが数え切れないほど出品された。気がつけば、このジャンルはアジアで大きなマーケットに育ち、日本発の新しい自動車ジャンルとしてアジアを中心にグローバル化していったのである。
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