今の園内の混雑に辟易として、「昔のディズニーはよかった」と感傷にふける気持ちはよく分かるが、それは今のディズニーが40年前のディズニーと比べて何か運営上に問題があるわけではなく、この40年間、「リピーター」が増え続けてしまった結果にすぎない。
もっと具体的に言うと「子どものころはガラガラでアトラクションも乗り放題だった。最近のディズニーはダメだ」と愚痴りながらも、1年に1回はディズニーに必ず通いつめる。「近隣からやって来る大人の女性」が雪だるま式に増えていったことが、日本のディズニー特有の殺人的混雑が引き起こしているのだ。
むしろ、それだけのリピーターを生んでいることは、テーマパークとしての高い満足感を提供し続けていることもである。当たり前の話だが、テーマパークでそれだけの「価値」を提供し続けるには、設備投資も続けなくてはいけない。「奴隷」を働かせているわけではないので、人件費も膨れ上がっていく。だから、世界では人気のある施設は「値上げ」をしていく。
しかし、日本の消費者は人気のある施設は「混んでいるから不快! もっと安くしろ!」とモンスタクレーマーのようにキレて、そこで働く人たちが必死の思いでつくり出している「価値」を全否定する。
これがいかに異常なことなのかを、後編記事では世界一の来場者数を誇るテーマパークを例に考えていきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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