当然のことながらアップルも、決して全ての市場でリーダーの座を奪うような大成功を収められているわけではありません。特に最近の事例で象徴的なのは、スマートスピーカーの市場でしょう。
Amazon Alexaが切り開いたスマートスピーカー市場は、AmazonとGoogleの2強の戦いとなっており、Appleは2018年にHomePodというスマートスピーカーを発売しましたが、現在のところも市場シェアは1割前後で、Amazon AlexaやGoogle Homeに比べると苦戦が続いているといわれています。
アップル苦戦の背景としては、ライバルが100ドル前後で販売している中で、HomePodは349ドルという3倍以上の価格であったことが大きかったと分析されています。
(参考:Appleのスマートスピーカーが売れなかった理由とは?新型「HomePod」の噂も)
もちろん、アップルはHomePod miniという廉価版も出しましたし、HomePod自体も今年になって新しいモデルが発売されており、今後市場シェアを伸ばす可能性はあります。
ただ、現在のところ市場の存在感でいえば、やはりニッチな存在というのが正直な現状です。
翻って「Apple Vision Pro」について考えてみると、ライバルの「Meta Quest Pro」と比較しても価格で3倍以上、普及端末の「Meta Quest 3」と比較すると7倍の差があります。価格差の開きを考えれば、「Apple Vision Pro」は、HomePod同様に、市場全体でみるとニッチな端末という位置付けになる可能性は否定できないわけです。
他にもApple TVというセットトップボックスがありますが、こちらはストリーミングデバイス市場の2%にとどまっているという調査結果があります。
(参考:Apple TVの市場シェアは僅か2%)
また、そもそもアップルが市場を切り開いたパーソナルコンピュータ市場において、MacはライバルのWindows PCにシェアでは大きな差をつけられています。当然のことながら、アップルが切り開いた市場で常に勝利を収められるわけでもないのです。
もちろん、アップルも当然のことながら、こうした過去の失敗から学んで今回の準備をしています。それが「Apple Vision Pro」をライバルが先行する「VRゴーグル」や「メタバース」向けの商品ではなく、「空間コンピュータ」という新しい概念の商品であると明確に位置付けた点でしょう。
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