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つんく♂に聞く 名曲「ズルい女」が生成AIに生み出せない理由つんく♂×AI研究者【後編】(1/3 ページ)

» 2023年07月01日 08時00分 公開
[乃木章, 今野大一ITmedia]

 ChatGPTをはじめとした生成AIは、文章やイラスト、楽曲など表現の世界にも劇的な変化を起こそうとしている。ビートルズの元メンバー、ポール・マッカートニー氏は同バンドの「最後の楽曲」となる新曲をAIによって制作し、今年リリースすると発表した。すでに個人に留まらず、米グーグルが文章から自動で作曲をするAI「MusicLM」を発表するなどコンテンツを作る企業も出てきている。

 これまでプロと一般の人々との間にハードルがあった音楽ビジネスで、続々とゲームチェンジが起ころうとしているのだ。今後、音楽ビジネスの世界でAIはどのような未来を描いていくのか。

 作詞・作曲家、音楽プロデューサーでありTNX社長のつんく♂氏と、AI研究者で、音楽生成AIを使ったアプリを制作するDataPOP社長の酒巻隆治氏に、「AIと音楽ビジネスの未来」をテーマに対談してもらった。

 前編では「ヒット曲を生むための3つのヒント」を聞いた。後編でも両者のAIへの見解に迫る。

 つんく♂氏はAIによって誰もが作曲できる時代が来ることを認めつつも、現時点でAIは、人の心に残る名曲を作れないと指摘した。事例として、自身で歌唱しているシャ乱Q時代の名曲「ズルい女」を挙げている。その理由を聞いた。

photo つんく♂ 総合エンターテインメント株式会社<TNX株式会社>社長、音楽家・エンターテインメントプロデューサー、作詞家、作曲家。1988年シャ乱Qを結成。92年にメジャーデビューし4曲のミリオンセラーを記録。その後「モーニング娘。」をプロデュース。ハロー!プロジェクトを始め数々のアーティストのプロデュースやNHK Eテレ「いないいないばあっ!」を含む数多くの楽曲提供、サウンドプロデュースを手掛ける。プロデュースした任天堂のゲームソフト「リズム天国」シリーズは全世界累計販売本数500万本以上のヒット。著書に「だから、生きる。」(新潮社)。オンラインサロン「みんなでエンタメ王国」オーナー。21年2月に坂本龍一氏との共同制作で小児がん治療支援チャリティーライヴのテーマソング 「My Hero〜奇跡の唄〜」 を発表。21年7月、大阪・関西万博 大阪パビリオン推進委員会スーパーバイザーに就任。『ALL THE SONGS OF つんく♂』が7月21日に発売(以下撮影:乃木章)
photo 酒巻隆治(Ph.D)DataPOP代表、AI研究者。大学・大学院と人工知能の研究室に所属し、KDDI、楽天にて10年をこえる研究職、東京大学、文教大学での非常勤講師などを経て、2014年DATA・AIをビジネス活用する会社を創業。18年社員数120人、年商15億円までビジネスを育て、KDDI子会社に会社売却。19年より会社を新設し、その中で既存法人向けビジネスとともに、個人向けAI活用としてアート・音楽に役立てるよう研究開発を手掛けている。DATA・AIに関する著書6冊。特許6つ取得。つんく♂氏を審査委員長とした「Cevio AIソングボイス」を使用した楽曲コンテストを7月14日まで開催中Twitter

作曲作りのレシピが生まれる未来

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