さて、クーラーを搭載したリュックは、どのような構造をしているのだろうか。開発メンバーは、保冷剤の冷熱(常温より温度の低い熱エネルギー)を利用して、背中を冷やすための仕組みを考えた。構造は大きくわけて2つあって、冷水循環装置と冷却シートである。
冷水循環装置は、保冷剤を入れる熱交換器やポンプなどで構成されている。熱交換器の中に保冷剤を入れるわけだが、その動作は、カセットデッキの中にテープを入れるような感じ。昭和世代にとっては「懐かしいなあ」といった感覚になるかもしれない(例えが古くて申し訳ない)。
そして、凍らせた保冷剤の冷熱を冷却シートに送り込むことによって、背面が冷たくなる。温まった水はこの装置に戻って、再び冷やされるという仕組みである。
「ということは、家の冷凍庫で保冷剤を凍らせて、それをリュックの中に詰め込む。帰宅時にも使いたい場合は、会社の冷凍庫で凍らせるということ?」と思われたかもしれないが、その通りである。ちなみに、開発チームのフロアにある冷凍庫には、複数の保冷剤が横たわっているそうだ。
リュックの構造の中で個人的に気になったのは、“ゆらぎ”機能である。人間は一定の温度に慣れてしまうと、温度を感じにくくなる。例えば、暑い日にスーパーに入ると「うわ〜涼しいなあ」となる。ただ、しばらくすると「ちょ、寒いなあ」と感じることもある。
この点について、開発メンバーの仲田昇平さん(ウエアラブル事業部)は「人の体は急激な変化に敏感ですが、緩やかな変化には鈍感なんですよね。こうした特性があるので、温度に“ゆらぎ”をもたせるようにしました」とのこと。
気温が35度のとき2時間連続で動かしたところ、背面の温度は90分以上28度以下だったという。もう少し詳しく説明すると、リュックを背負ってから40分ほどはじわじわ冷えていって、ピークを迎える。その後、温度は上がったり下がったりして、少しずつ上昇していくという形だ。
「発熱したときに保冷剤を額にあてると、最初は気持ちいいですが、だんだん冷えすぎて頭が痛くなることがありますよね。『ちょうどいい』温度をいかに持続させるか。このことは欠かせないと思いまして、ゆらぎ機能を搭載しました」(仲田さん)
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