メカメカしい話が続いたので、読者の多くはこのようなことを感じたかもしれない。「背中がひんやりするのはよく分かった。でも冷却装置が詰まっているので、リュックを背負ったときに『重いな』と感じるのでは」と。
このことは開発メンバーも課題として受け止めていて、「重く感じない」ためにスポーツメーカーのミズノと共同開発することに。ミズノの「スプリットストラップ技術」(左右に分割したクッションにより体への荷重を分散)によって、冷却装置の重さを感じにくくするとともに、たくさんの荷物を入れても快適に移動できるようにした。
背中の曲線にフィットする立体形状をつくり出して、重量感を分散させることに。また、背面下部にクッションを取り付けることによって、リュックを腰で支えられるようにした。さらに、可動式のフロントストラップを採用。ちょっとした動作でもリュックが背中から離れず、涼しさを感じられるように設計した。
リュックを開発するうえで、最も苦労したことは「背面の冷却シートをカバーする生地をどうするか」問題である。装置を衝撃から守るためには、生地を厚くする必要がある。ただ、厚くしすぎると熱伝導が悪くなってしまう。
ということもあって、すべての生地を計測(熱流束:単位時間あたりに単位面積を通過する熱量のこと)し、どれが適しているのかをチェックしていったのだ。ミズノによると、カバンの試作品は3回ほどつくるケースが多いらしいが、今回のリュックは7回も繰り返した。
背中の蒸れは軽減する。背負っても、それほど重さを感じない。富士通ゼネラルとミズノがタッグを組んで、これまでになかったリュックを完成させたわけだが、いまのところの課題は“宣伝”である。
富士通ゼネラルはこれまでエアコンをたくさんつくってきたこともあって、ユーザーに直接PRすることが少ない。経験不足が影響してか、今回のリュックもまだまだ知られていない。このことは担当者も認識していて、今後は展示会などに出品して、少しずつ認知拡大を図っていきたいという。
リュックを背負ったお客は、どのような反応を示すのか。“ひんやり”とした空気が漂うのではなく、熱い声を聞きたい――。開発メンバーはこのように感じているはずだ。
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