各社の対応はどうか。タイガーは公式Webサイトに「スポーツドリンクも使用できる」としつつ「しかしながら、スポーツ飲料の成分には塩分が含まれており、ステンレスが腐食する可能性がある。使用後はすぐに手入れをしてほしい。外出先など充分なお手入れができない時でも、すぐに本体内側をよく水ですすいでほしい」と記載している。
サーモスも同様に「スポーツドリンクには微量だが塩分が含まれている。スポーツドリンクに限らず、飲みものの成分が残ったままでは、ステンレス鋼が腐食し、性能不良の原因となることがある。使用後は、成分が残らないよう、食器用中性洗剤を含ませたスポンジやボトルブラシで洗い、流水でよくすすぎ、十分に乾燥させてほしい」と注意喚起している。
有力メーカーの象印も2社と同様に「ボトルに錆びが生じる可能性がある」として、スポーツ飲料を入れることに否定的な姿勢だ。洗う際は金属製たわしを使用しないことや、強くこすりすぎないことなどを推奨している。
こうした背景もあり、京セラはボトル事業参入を検討。錆びないというセラミックの特性を生かした商品開発を目指した。その過程では、水筒使用による味の変化に関して、独自調査を実施。44.2%が「味の変化を感じた」と回答したという。
セラミックといえば、セラミックナイフのような固形を連想しがちだが、フライパンのような金属基材にセラミックコーティングする技術もあった。この技術を応用し、ボトル内面にセラミック加工を施すことで、味が変化しない商品が作れると考え、本格参入に至った。
マーケティング面では、セラミック製でスポーツ飲料対応という点で差別化することはもちろん、「かわいいよりもかっこいい、都会的、さりげなくトレンドを押さえる人」「休日も外出する人」とターゲット層を明確に絞って事業を展開している。
前述の独自調査で、特にコーヒー好きには強いニーズが期待できることが分かったためだ。主要ターゲットは「トレンド志向な20〜30代」、サブターゲットとして「ちょっとしたお出かけが多い40〜50代」にそれぞれ設定した。
京セラ広報によると「セラミック製ボトルは陶器性のコップと同等に金属溶出量が少なく、飲み物の味がほとんど変わらないといった特長があり、味や香りの変化を感じやすいコーヒーや紅茶にも適している」という。実際、金属成分の溶出量をステンレス製ボトルと比較すると、約4分の1程度に抑えられ、陶器製カップとほぼ同等であることも分かっている。
コーヒー好きなど嗜好性の高い層の利用を想定しているため、ボトルのサイズ展開は一般的な市場サイズよりも少し小さめの180mlや300mlを中心としている。先行する老舗メーカーとは異なり、スポーツドリンクにも対応しつつ、コーヒー好きの需要に応える製品という独自性を確立している。
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