京セラ、セラミック加工の「錆びないボトル」販売好調 スポーツ飲料対応で独自路線猛暑に商機 「ひんやりグッズ」の狙い(3/3 ページ)

» 2023年07月31日 11時42分 公開
[樋口隆充ITmedia]
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売り上げは前年比1.2倍 高価格が課題

 後発ながら「コーヒーがおいしく飲める商品」として、売り上げを伸ばしてきた京セラだが、昨夏は今夏同様、猛暑日が続き、水分補給用途での需要が伸びた。直近の売り上げについて同社広報は「4〜6月の売り上げは、前年同期比127%(1.27倍)だった」と回答。7月のデータはまだ出ていないが、暑さが続いた22年7月の出荷数は前年比202%増だったという。「猛暑に加え、近年のコーヒー需要の高まりも寄与している」(同社広報)としている。

photo 京セラの本社(出典:同社公式Webサイト)

 ただ、セラミックボトルにも課題がある。それは価格だ。同社によると「セラミックコーティングをすることで、酸やアルカリに強く、さまざまなドリンクに対応し、鉄成分の溶出が少ないことで、飲みもの本来のおいしさをより長く楽しめる」というメリットがある反面、「セラミックコーティングをしていない他社品に比べて、製造工程が多く、その分、価格帯が少し高めになる」という。製造コストを抑えることが今後の課題になりそうだ。

 多くの小中高生は、これから夏休みを迎える。部活動の練習や、運動会・体育祭といった行事で、今後しばらくスポーツ飲料への需要が高まると予想される。そうした中で、タイガーなどの競合メーカーは1.5〜2Lの大容量ボトルも販売しており、売り上げ向上・シェア拡大のためには大容量モデルの製品化が重要にも思える。

photo 夏休み中の部活動にも水分補給が欠かせない(提供:ゲッティイメージズ)

 京セラは「ブランドコンセプトでもある『おいしい瞬間をいつまでも』という、他社と差別化したブランド認知を高めることを優先している」と前置きした上で「そこからスポーツドリンクやコーヒー、紅茶などさまざまなジャンルの飲料に合った最適な商品を広げていく中で、大容量などの商品展開もニーズがあれば取り入れていきたい」と回答した。

 今後に向けては「現在、世界的にペットボトルなどの使い捨て容器を減らす動きが増えている。日本国内だけでなくグローバルな視点で販売を強化していく」と意気込んだ。

激化するボトル開発競争

 京セラがスポーツ飲料対応、紅茶・コーヒーがおいしく飲めるという、主要メーカーの弱点をカバーする形で業界内での立場を固めつつある中、スポーツ飲料に関しては、タイガーが、ステンレスに独自の表面加工を施し、錆びにくいステンレスボトルを発売している。22年7月には熱中症対策として「水筒にスポドリいれよう キャンペーン」を実施し、課題改善を強調した。

photo タイガーが販売する一部の商品はスポーツ飲料に対応している(出典:同社公式Webサイト)

 象印も同様に、ステンレスをフッ素加工した「スポーツドリンク対応ボトル」を販売している。

photo 象印のスポーツ飲料に対応したボトル(出典:同社公式Webサイト)

 炭酸飲料にスポーツ飲料。いずれも、かつては持ち運びに不向きとされた飲料だが、各社の技術で状況が改善されつつある。今後も各社の商品開発と販売動向に注目が集まりそうだ。

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