京セラ、セラミック加工の「錆びないボトル」販売好調 スポーツ飲料対応で独自路線猛暑に商機 「ひんやりグッズ」の狙い(1/3 ページ)

» 2023年07月31日 11時42分 公開
[樋口隆充ITmedia]

猛暑に商機 「ひんやりグッズ」の狙い:

電気代高騰や猛暑を背景に企業が「ひんやりグッズ」に商機を見いだしている。ヒットしている商品はどのようにして開発されたのか? 売り場のトレンドはどうなっているのか? 消費者のトレンドや開発の舞台裏に迫る


 連日の猛暑が続き、報道各社や専門家が水分補給の重要性を説く中、近年のエコ志向を背景に、マイボトルの存在感が高まっている。業界大手のサーモス(東京都港区)やタイガー(大阪府門真市)は炭酸飲料に対応した「炭酸ボトル」を相次いで発売。猛暑や節電需要に加え、ビールなどアルコール類への対応も昨夏の大ヒットにつながった。

photo 猛暑日には水分補給が欠かせない(提供:ゲッティイメージズ)

 主要メーカーが特色ある製品で売り上げを伸ばす中、“祖業”を武器に売り上げ拡大を目指す企業がある。京セラ(京都市)だ。1959年4月にセラミック製品の専門メーカー「京都セラミック」として創業した同社は、包丁などのキッチン用品から住宅用ソーラーパネル、電子部品まで幅広く手掛ける総合メーカーとしての知名度があるが、実はボトルも展開中。業界ではステンレス製ボトルが大半を占めるのに対し、セラミックを使い、錆びへの強さとともに、スポーツ飲料の持ち運びにも対応という独自路線を歩んでいる。

主流のステンレス製ボトル 実はスポーツ飲料NG

 京セラは2017年、ワンタッチタイプのマグボトルを発売。同年にスクリュー栓タイプのボトルも投入し、ボトル事業を本格化させた。現在は2タイプ(180ml・300ml)に加え、タンブラー2種(350ml・500ml)も販売している。

photo 京セラ製のボトル
photo 京セラ製のタンブラー

 タイガーやサーモスといった老舗メーカーに比べると、歴史が浅い京セラ製ボトル。後発として意識したのが、祖業の強みを生かした商品開発だ。

 現在、普及している一般的な水筒の多くは、ステンレス製の真空断熱構造(魔法瓶構造)。真空断熱構造は、保温性や保冷性が高く、飲み頃の温度をキープする機能性に優れる。

 他方で、内面がステンレス製の製品が多く、大塚製薬「ポカリスエット」や日本コカ・コーラ「アクエリアス」(ともに酸性)などのスポーツドリンクを入れた場合、金属が酸と化学反応。錆びの原因につながるため、スポーツドリンクを入れることがNG、または推奨していないケースが少なくない。

photo アクエリアスの持ち運びに注意喚起(出典:日本コカ・コーラ公式Webサイト)

 実際、20年7月には、大分県の高齢者施設で、ステンレス製のやかんに入ったスポーツドリンクを飲んだ13人が下痢や嘔吐する食中毒事件が発生。原因は、やかん内部にできた「水あか」の銅成分が、酸性のスポーツ飲料を入れたことで溶け出したことだった。

 こうしたことを受け、厚生労働省は公式Twitterアカウント(@MHLWitter)で「金属製の容器(ヤカンや水筒)にサビや傷があると、酸性の飲み物と反応し、金属が溶け出すことがあります。腹痛、吐き気、下痢などを引き起こしますので、金属製の容器に酸性のジュースやスポーツ飲料を長時間保管しないようにしましょう!」と投稿。利用者に注意を呼び掛けた。

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