変わるアニメの“稼ぎ方” 23年のアニメ制作市場、初の3000億円超えの可能性も帝国データバンク調べ(3/3 ページ)

» 2023年08月21日 11時40分 公開
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3社に1社が海外企業と取引

 日本のアニメ制作企業が、海外の動画プラットフォーマーや制作会社と取引を行うケースも増加している。アニメ制作企業314社のうち、外注や制作請負、作品提供などで海外企業との取引を行っているのは103社。3社に1社が海外企業と取引しており、取引社数・割合ともに調査開始以降で過去最高となった。

photo 海外取引の割合

 このうち、米国系企業との取引は前年(26社)から約2倍に増加。NetflixやAmazonなど、米国系動画プラットフォーマーへのアニメ作品提供や、独占配信などの直接契約・取引といった機会が、大手から中堅へ拡大していることが要因とみられる。帝国データバンクは「近時の日本アニメは、制作面では中国や台湾、韓国へ、配信面では米国や欧州へ取引が増える傾向が強まっている」と指摘する。

最適な制作モデルの模索が続く

 23年のテレビアニメは『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』『呪術廻戦 第2期』などの話題作が、劇場版では『スラムダンク』が中国で大ヒットした他、宮崎駿氏の最新作『君たちはどう生きるか』も順調な滑り出しを見せている。同社は「日本アニメは今後も、制作力や企画力の高さを武器にキラーコンテンツとしての地位の確保が期待できる」と推測する。

photo 8月末から新作が放送される『呪術廻戦』(公式webサイトより引用)
photo 中国で大ヒットした『スラムダンク』(公式webサイトより引用)

 アニメ制作ではこれまで主軸だったテレビ放送からVODへと配信チャネルの多様化が進んでいる。こうした制作モデルは1社が負担するリスクが大きい半面、関連グッズなどIP収入の最大化も期待できる点がメリットだ。制作会社が積極的にIPを保有する制作モデルが、今後有力な選択肢として広く浸透する可能性がある。

 しかし、VOD向け作品の単純な増加は、テレビアニメや劇場版向けで既にひっ迫している制作現場の人手不足や過重労働を助長する危険性もある。帝国データバンクは「20年代のアニメ制作業界はどのような制作モデルが最適か、仕組みづくりを模索する展開が続くとみられる」と分析する。

 調査は、7月時点の信用調査報告書ファイル「CCR」(190万社収録)や外部情報をもとに集計・分析した。同様の調査は22年8月に続き8回目。

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