変わるアニメの“稼ぎ方” 23年のアニメ制作市場、初の3000億円超えの可能性も帝国データバンク調べ(2/3 ページ)

» 2023年08月21日 11時40分 公開

IP事業収益が中堅元請にまで拡大

 制作態様別でみると、直接制作を受託・完成する「元請・グロス請」の平均売上高は16億6700万円。前年(15億5300万円)を上回り、2年ぶりの増加に転じた。業績面では「増収」が54%、「減収」は25%と21年から15ポイント低下した。損益面では「増益」(49%)が過去20年で2番目に大きかった一方「赤字」は34%で、元請間における収益力の二極化がうかがえる。

photo 業績動向「元請・グロス請」

 これまで大手が中心だったIP事業の収入は、VOD運営大手との取引増加を背景に中堅元請にまで拡大。一方、自社版権が少ない小規模・新興の元請では、人材不足から受注量を拡大できないケースや、自社での消化能力を超えたことで外注費がかさんだケースも散見され、減益や赤字が多く発生した。自社IPの有無や制作能力の規模によって、元請間の収益バランスに格差が生じている。

 下請としてアニメ制作に携わる「専門スタジオ」の平均売上高は3億7200万円で、コロナ禍による制作本数減の影響を大きく受けた前年(3億5700万円)から増加した。業績面では「増収」は39%、「減収」は18%と増収が減収を上回り、特に減収の割合は過去20年で初めて2割を下回った。損益面では「増益」が45%を占めた。

photo 業績動向「専門スタジオ」

 専門スタジオでは、アニメーターの採用や育成、デジタル機材の導入など設備投資を実施。また、CG使用を中心に請負単価が上昇した専門スタジオもあり、全体的な収益力は改善傾向へと向かっている。拡大するデジタル制作分野の事業へ進出・展開するケースもあり、元請の制作動向に左右されない収益構造を目指す動きもみられた。

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