女性活躍は本当に進んでいる? 「経営」に関わる取締役が全然増えていない“悲しい実情”(1/3 ページ)

» 2023年09月01日 07時30分 公開
[今井昭仁ITmedia]

この記事は、パーソル総合研究所が2023年7月24日に掲載した「女性役員比率30%目標から人的資本経営を見直そう」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 2023年6月に「女性版骨太の方針2023」が公表された。そこでは、プライム市場の上場企業を対象に、次の内容が盛り込まれた。

2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める。

2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す。

上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する。

 この内容について各所で賛否を見かけるが、本コラムでは、類似の取り組みがなされた海外の動向や、23年3月期決算の株主総会招集通知の情報を確認しながら、女性の取締役登用について考えてみたい。

女性活躍 (提供:ゲッティイメージズ)

海外の成功事例 背景に残念な実情

 「20年までに指導的地位の女性を少なくとも30%」――。これは政府が、今から20年前の03年に掲げた目標である。ここで指導的地位を指していたのは管理職層だったが、依然達成されていない。今回の目標では「役員」とされたので、より上級職をターゲットにしたことが分かる。こうした役員層をターゲットにする先行事例は、ヨーロッパに多く見られる。

 そこで、ここではまず役員層の一定割合を女性に割り当てる仕組み、クオータ制を導入したヨーロッパの国々について確認したい(参考:内閣府男女共同参画局「共同参画」)。

 ノルウェーは05年、世界ではじめて企業役員を対象としたクオータ制を導入した。これによって少なくとも40%の女性取締役が求められるようになった。フランスは11年に取締役クオータ法が制定され、14年までに20%、17年までに40%の達成が義務付けられた。ドイツでは15年に監査役会を対象にクオータ制が制定された。

 クオータ制の導入以外に、日本と同様に数値目標を掲げて、各社の努力を促す国もある。イギリスである。イギリスでは11年にデーヴィス報告書が公表された。同報告書は、イギリス時価総額上位100社である、FTSE100構成銘柄企業の女性取締役比率を15年までに少なくとも25%とするよう勧告した。その後の15年、女性取締役比率は26.1%となり、この目標は実際に達成された。さらに、目標は20年までに33%へと引き上げられたが、こちらも達成されている。

 女性取締役の数値目標を掲げるイギリスの取り組みは、一定の成功を上げてきた。ただし「一定の」である。

 取締役会には大きく2つの機能がある。業務執行を行う経営機能と、そのモニタリングを行う監督機能である。女性取締役比率25%を達成した15年には、業務執行を行う取締役について女性の選任が少ないことが課題とされた。この15年の時点で、業務執行を行う取締役は9.6%、この数値は22年でも16.4%と伸び悩んでいる(参考:FTSE Women Leaders “FTSE women leaders review”)。

 イギリスの事例から分かることは、女性役員の増加を掲げた際、その選任は監督側に集中する傾向があることだ。言い換えれば、女性役員の増加を掲げても、経営を担う女性はそれほど増加していない。

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