GEO、たった2年で「時価総額が倍増」 店舗数は減ったのに、なぜ?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2023年09月01日 13時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 レンタルショップで有名な「GEO」を運営するゲオホールディングス(名古屋市)の時価総額がここ2年足らずで倍増し、1000億円を突破した。

 同社といえば、ビデオ・DVD・CDといった物理メディアのレンタルビジネスを手掛けることで、1980年代から2000年代初頭にかけて、消費者の支持を集めてきた歴史の長い企業である。

 しかし、近年ではオンラインでのコンテンツ配信やサブスクリプションビジネスの普及と共に、映像や音楽の物理メディア需要が減少。ただでさえコロナ禍の影響で実店舗型のビジネスが軒並み苦境に立たされている中、日本ではNetflixやSpotifyなどのサービスが普及し、GEOのビジネスモデルは大きな脅威に直面していた。

 では、同社の業績はやはり右肩下がりなのだろうか。実はその逆だ。ゲオホールディングスの業績は2019年以来右肩上がりとなっている。売上高は4期連続で最高を更新しており、今期には4200億円と過去最高売上を再び更新する見込みだ。また、営業利益も今期には史上最高益に近い150億円へと着地することが見込まれ、第一四半期の営業利益は前年同期比で43.8%も伸びている。

 レンタルビジネスに関する周辺環境が悪化の一途を辿る中、同社はなぜ業績を成長させることができたのか。そこには3つの勝因があった。

もはやレンタルショップではない

 「GEOといえばレンタルショップ」というのがわれわれ大多数の消費者の認識だが、ゲオホールディングスの事業セグメント別の売上高比率を確認すると驚きの事実が判明する。

 それは、レンタルビジネスの売上高構成比率はたった10%未満にすぎないということだ。会社四季報の情報によれば、全体の売上高のうち53%を「リユース」、32%を「新品」という事業が占めている。

 しかし、レンタルショップのGEOに足を運んでも、古着や雑貨などに代表されるリユース品など見当たらない。では、同社はどこでリユース品を取り扱っているのか。その答えは、「2nd STREET」と呼ばれるリユース品専門ブランドである。

photo 2nd STREET(同社公式Webサイトより)

 地方都市は大型道路の路面店、都内では原宿や渋谷のような一等地から下北沢や高円寺といった郊外までバランスよく店を構えており、同社のブランドだとは知らずに店を見かけたことがある方もいるかもしれない。年間50店舗の新規出店を目標として全国に店舗を拡大しており、すでに店舗型のリユース業態では同ブランドが業界でもトップシェアに躍り出ているという。

 このような大規模な収益モデルの転換をビジネスの世界では「ピボット」という。元々はバスケットボールなどで用いられる言葉であるが、本来は「回転軸」を意味する英単語だ。ビジネス用語では、事業の方向性を転換することを指す。

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