新時代セールスの教科書

営業業務の効率化に「AI」は必須ではない より重要な「ある条件」を満たすデータ(3/3 ページ)

» 2023年09月07日 08時00分 公開
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ステップ3:デザインしたオペレーションを実装する

 取得すべきデータの定義が決まったら、ようやくオペレーションの実装に進みます。

 誰のどのようなアクションがトリガーとなるのか、どのタイミングでどんなアクションが必要か、データは自動で連携されるのかなど、詳細を詰め、実際に業務オペレーションとして実装し運用します。

「ナーチャリング」における営業オペレーションを細分化したイメージ

 上図は「ナーチャリング」における営業オペレーションを細分化したものです。顧客から取得済みの情報やリアクションに応じて、営業担当の適切な打ち手は複数のバリエーションが存在します。

 このように規定したオペレーションを組織的に実行すると同時に、データを蓄積できるようにソリューションに落とし込みます。

 また細かい点ですが、営業担当の負担を減らし、かつ粒度がそろったデータを収集するポイントとして、自由記述はなるべく排除し、チェックボックスやラジオボタンなどの選択式項目とすることも重要です。

現場の担当者が営業活動を実行すると同時にデータが貯まる運用方法にする

 MAやCRMなど複数ツールを導入している企業では、設計した営業全体のオペレーションが機能しているか、定義したデータが想定通りにつながっているかどうか、確かめてください。

 重複する入力作業を排除することや、営業サイクルの中で取得すべきデータを必須項目化し、抜け漏れがあった場合は営業プロセスが先に進まないような設定をするなど、些細なムラを見逃さないための仕組みを最初に作っておくことが重要です。

ステップ4:プロセスの改善

 実装が完了したら終わりではありません。オペレーションを一定期間運用した結果、生成されたデータを分析しながら、プロセス全体を改善していきます。

プロセス改善の手順

 蓄積されたデータの活用の流れとして、まずデータの作られ方・見方が分かる人材が分析し、顧客の予算や導入時期などの条件面、課題感、営業担当のアクションといった変数のうち、どの部分がその後の受注率やサービスの継続利用と相関関係を持つかを見つけます。

 情報の関連性から営業活動のどの部分が顧客にとってサービス利用の障壁となっているのか、また成功のポイントとなるかを導き出すことができれば、根拠に基づいてプロセスを改善できます。計測やボトルネックの特定に割く時間を最小化し、改善策の策定や実行に十分なリソースを割くことが重要です。

 ご紹介したように、4つのステップを全て実行するのはハードルが高いと感じるかもしれません。しかし全てを劇的に一挙に変える必要はありません。まずは自社営業組織の中で、分業化によりサイロ化・複雑化・重複している部分に注力し、業務デザインをつなげることを検討してみてください。


 ここまでAIを営業組織に組み込むハードルと導入までのアウトラインを解説し、データの取得・活用において複数部門の連携が求められることは納得いただけたかと思います。とはいえ、組織を横断する全社的な取り組みの規模の大きさに、二の足を踏むのも理解できます。

 次回は、部門横断した「構造化データ作り」の先にあるメリットをご理解いただくため、AI×セールステック活用の先進国である米国やドイツの事例をとり、どこまで進んでいるのか、どのような効果が出ているのか、日本企業はなにを参考にすべきなのかを元外資系企業のバイスプレジデントをゲストにお招きしてご紹介します。

筆者プロフィール:村尾 祐弥 株式会社Magic Moment

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中央大学法学部卒業後、2社を経てGoogle Japan、freeeで営業部門の統括及び責任者として事業成長を牽引。2017年にMagic Momentを立ち上げ、2018年9月より経営を本格化。累計資金調達額20億円(DCMベンチャーズ、DNX Ventures、三井物産、ほか)。LINEやUSEN、凸版印刷等、多くのエンタープライズ企業の営業変革を人・テクノロジー・オペレーションの全方向から支援。2021年にローンチした営業AI行動システム Magic Moment Playbook は、SMBの大量解約の時期を乗り越え、現在はエンタープライズ企業の生産性向上、LTV向上を非連続に実現している。


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