なぜ、新型センチュリーは“SUV”と名乗らないのか 副社長が語った「その先」の戦略鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)

» 2023年09月07日 11時17分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

開発のきっかけは章男氏の一言

 新型センチュリー開発のきっかけは「今、世界的にラージクラスのプレミアムSUVが流行っていて、売れそうだから」というわけではないようです。もともとトヨタの前社長である豊田章男氏から「若い世代に向けた、これまでとは違う新しいセンチュリーが欲しい」というのがスタートだったとか。「若い世代に向けた新しいセンチュリー」がどんなものなのか、開発陣は相当悩んだそうですが、最終的に後席に座る乗員の乗り降りの所作を最優先に考えたそうです。

suzuki センチュリーの主人公は後席の乗員(発表会で編集部撮影)

 センチュリーはショーファードリブン、いわゆる運転手付きのVIPのクルマであり、主人公は後席の乗員です。その後席の人が乗りやすく、座りやすく、そして降りやすい座席の高さから始まり、クルマ自体の高さや大きさなどが決まったのだとか。荷室と前後座席との間は透明な仕切り板で区切られています。格好はSUVでカジュアルに見えるけれど、中身は従来通りのフォーマル感のある快適空間となっているのです。

suzuki フルリクライニング可能なリアシート(発表会で編集部撮影)

 また、開発では「センチュリーらしいかどうか」を非常に重要視したそうです。威風堂々たるスタイルや、日本の美意識を感じさせるディーティールへのこだわり。後席を重視した居住性、滑らかで静粛性に優れた走りは、歴代のセンチュリーの開発と同様の目線で行われたといいます。

 さらに生産は、これまでと同様に“匠”と呼ばれる技能に優れた少数のスタッフが手掛けます。生産数はなんと月間30台。今回のモデルからは国内専売ではなく、注文があれば海外にも販売します。しかし、生産は日本国内の愛知県の田原工場だけで月に30台しかありませんから、すぐに長いバックオーダーとなることでしょう。

suzuki 生産は少数精鋭の“匠”が手掛ける(発表会で著者撮影)
suzuki 「鳳凰エンブレム」完成には1.5カ月かかる(発表会で著者撮影)

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