新iPhone発表間近 新機能・性能より注目していること本田雅一の時事想々(2/4 ページ)

» 2023年09月12日 17時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 この話の前に、日本と日本以外のスマートフォン市場に乖離(かいり)が生まれている話をしておきたい。

 日本市場におけるスマートフォン端末の販売傾向は、総務省による端末販売支援金のルール設定などにも影響されて歪になっている面もあるが、それ以上に所得の伸びやインフレ率など市場環境による乖離も大きい。

 昨年はグローバルでスマートフォンの端末売り上げが落ち込んだが、その中でもiPhoneシリーズは落ち込みの幅が少なく、結果として業界の中での存在感を増すことになった。中でも驚かされたのが、製品が発表された9月以降、iPhone 14 Pro Maxがグローバルで最も多く売れたことだ。2番目に売れたのもiPhone 14 Proであり、最もボリュームが出ると目されていたiPhone 14よりも多かった。

photo iPhone 14 Pro/Pro Max=アップルのニュースリリースより

 アップルは機種別の販売台数を発表していないが、販売数に比例するアクセサリー販売を見る限り、日本ではPro Maxがほとんど売れない。販売構成比率の低さから、サードパーティー製のバリエーションが用意されていないことも多い。

 背景にはiPhone 14向けディスプレイパネルの調達問題があり、販売初期に潤沢にPro/Pro Maxの流通があったことも影響しているため、発表が見込まれているiPhone 15/15 Pro シリーズでも同様の販売構成比になるとは限らない。

 しかし、アップル全体の製品戦略、販売戦略を考察する際には「日本市場の常識」のようなものをいったん脇に置いて考えたほうがいいだろう。

 iPhone 15 Pro Max(あるいはそれに相当するモデル)は、価格が30万円に届くとうわさされている。日本市場の状況からすれば、とても手が出ないと思う方もいるだろう。

 昨年、日本で最も多く売れたiPhone 14シリーズは、最上位モデルに相当する性能やカメラ画質をもち、長期間のOSアップデート(近年の例では5世代分+セキュリティアップデート)も保証されている費用対効果に優れたモデルだ。このモデルがベストセラーになることは不思議なことではない。「メインストリーム中のメインストリーム」といえる製品だ。

 テクノロジーをバックボーンにする製品ジャンルで、安定した高級ブランドを構築することはなかなか難しいが、近年のアップルはそれに成功している。

 理由は一つだけではない。

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