今年の最新iPhoneが“いくつ”なのかを知らない人でも、買い換える時には一番いいiPhoneが欲しい。「一番いいのはどれ?」「画面が見やすいのはどれ?」「重さは?」。もはや性能の高さやカメラの細かなスペックではなく、必要な時にどのiPhoneが自分に適しているのか。そうした領域になってきた。日本とグローバルでの市場の乖離は、こうしたブランディングが同様に進んでいる中での、販売方法や経済的な環境の違いによるものだ。
かつてテレビ地上波が一斉にデジタル化される際、市場ではテレビ受像機の買い替えが短期間で発生したが、それ以前にさかのぼると、日本のテレビ受像機は年間800万〜1000万台の間で安定して推移していた。
薄型テレビのイノベーションもかなり進んでいたころ、「テレビはもうオワコン」と言われた時代だ。もちろんメーカー、製品間で画質に違いはあったものの、どれを買っても悲惨な結果にはならないだけの基礎的な品質はあった。
その中でも毎年の改良が注目されたのは、全員ではなくとも“今年必要な人”にとっては、製品選びは重要だったからに他ならない。
iPhoneだけではなく、高額なスマートフォンは毎年買い換えるものではなくなってきている(あるいはリセールバリューを期待した買い方をする)中では、長期的な端末の耐久性、アップデートの長期的な保証(アップル以外も、クアルコムとサムスンは4世代分のアップデートを提供するための提携をしているなどの枠組みがある)など、消費者とメーカーの間の信頼関係が、より重視されるようになってきたと言い換えてもいいだろう。
こうした観点で新しいiPhoneのラインアップ、そして大きなハードウェア性能の向上よりも、ウェアラブル製品として体験の質を重視した進化をしてきたApple Watchが、どのように新しい世代を刻むのか。
アップルが長年続けてきた努力の甲斐(かい)なく、これまで一貫してデジタルガジェットとしての扱いを受けてきたが、今年はブランド化への大きな一歩を記せるのではないか。今夜のSpecial Eventに期待したい。
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