ウォルマートの2023年1月期の広告代理店売り上げは27億ドル(3940億円)となりました。広告代理店事業部「ウォルマート・コネクト」(Walmart Connect)は売り上げを伸ばしながら、圧倒的な客数からスポンサーをひきつけています。
デジタル・マーケティングなどの市場調査会社のインサイダー・インテリジェンスによると、米国における2023年のリテールメディアの市場規模は450億ドル(約6.6兆円)。ウォルマートの事例だけでなく、リテールメディアは米国で急成長しており、4年後の27年には1060億ドル(15.5兆円)にも達すると予想されています。
リテールメディアが有望なのは、しっかりとデータ化できる点にあります。例えば、先に挙げたネットスーパーの代替品の事例でも、比較検討に効果的なA/Bテストが容易にできるのです。
顧客属性に購買履歴などからデータを抽出して科学的に検証することも可能です。したがって、テレビのように不特定多数に向けてコマーシャルを打つより、リテールメディアでの広告コスパが明確に可視化されるため、スポンサーにもなりやすくなるのです。
投資家向けイベントに出席したウォルマートCFOのジョン・デビッド・レイニー氏は23年3月、広告拡大によるB2Bが急成長していることで、5年後には小売りの利益を超えると発言しました。機関投資家が集まるレイモンド・ジェームス・カンファレンスで、レイニー氏は「現在、ウォルマートの利益のほとんどが実際の店舗から来ています」としながらも「5年後には急成長する小売以外のビジネスにより小売りへの依存度がはるかに低くなります」と述べたのです。
8月にレイニー氏は「アメリカ国内においてウォルマート・コネクトの売上高は第2四半期中に36%増加し、過去2年間でほぼ2倍の規模に拡大しました」と述べ、今も成長が目覚ましい広告代理店事業を強調していました。
B2Bである小売ビジネスの粗利益率は24.1%。一方、マーケットプレイスや広告代理店事業などの企業間のビジネスでは粗利益率は70〜80%にも達します。見方を変えれば、リテールメディアのパワーハウスとなるウォルマートは、5年後にビジネスモデルを変えることになるのです。
マーケットプレイスで販売する業者が増えていることから、サードパーティからの手数料売り上げが急増しています。マーケットプレイスでの取り扱い品目数が増えれば買い物客も増加します。
ウォルマート・コムにビジターが増えることで広告代理店事業の躍進を支えていることにもなるのです。激増するマーケットプレイスの業者がこぞってスポンサープロダクト広告に名乗りを上げるからです。
業者が扱うのはロングテールになる微小なニーズの商品。これがウォルマート・コネクトの売り上げ急増の背景になっているわけです。
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