1人あたり数百万円!? ホンダジェットで地方観光「ゴージャス旅」の狙い「富裕層」を狙え! 観光最前線(2/5 ページ)

» 2023年09月22日 08時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 ツアーは、参加者が滞在する都内のホテルを起点とする、ハイヤーによる送迎から始まる。羽田空港のプライベートジェット専用の入り口から入り、このツアーのためにチャーターされたホンダジェットに搭乗する。富山空港には1時間程度で到着し、駐機場の機体に横付けされたハイヤーに乗り換え、現地での各種体験に向かう。

photo 「シームレスな移動体験」と「地域の高付加価値体験」がツアー企画の目玉(提供:Japanticket)
photo ホンダジェットにハイヤーが横付け(写真提供:Japanticket)

 実は「機体へのハイヤー横付け」がこのツアーのハイライトの一つでもある。地方空港の場合、通常はプライベートジェットを降りると徒歩で空港施設を通りハイヤーに乗る。空港によっては、立派とはいえない施設を通らなければならない。

 ただ、そうなるとせっかくの特別感が一気に色あせる。せっかくの体験と価値がそこで分断されてしまうのだ。シームレスな移動体験をうたう以上、全体最適が成されていなければ意味がない。横付けは、このツアー体験には大切な要素なのだ。何にも増して、タラップを降りその場でハイヤーに乗るという行動自体が映画の登場人物になったようで、参加者の心をくすぐる。

空港側を説得して実現

photo Japanticketの宮崎有生氏

 Japanticketの宮崎有生氏(執行役員事業開発兼インバウンドDX推進担当)は「ホンダジェットの側でも、このような横付け対応は前例がありませんでした。ツアー企画のために特別に設定してもらいました」と打ち明ける。

 実際、敷地内に一般車両が入ることを安全面やセキュリティ上の理由で由としない空港は少なくないという。だが「法律で禁じられているわけではありません。空港関係者や管轄する自治体と協議を重ねながら、課題を1つ1つクリアして実現にこぎ着けました」と語るのは、本田技研工業の井上大輔氏(コーポレート事業開発統括部 新規事業開発部MaaS事業ドメインプロジェクトリーダー)だ。

 地方空港の中には、プライベートジェットの離着陸が少ないなど、前例がないことを理由に、横付けに難色を示す事例もあるそうだ。井上氏は「空港により申請の書式が異なったり、現地視察が必要になる場合もあり、個別の対応が求められます。理解を得るために根気よく調整することが大切です」と付け加える。

 空港を管理する自治体としては、経済活性化のために富裕層インバウンドは歓迎こそすれ、忌避すべき対象ではないはず。さまざまな課題に対し解決策を示し、懸念さえ払拭できれば、ハードルは取り除かれるだろう。

photo 定期便の離着陸がない滑走路が1200メートル程度の地方空港周辺にこそ、高付加価値な観光資源があるという(提供:Japanticket)

 このビジネスが本格化した暁には、全国約70の空港をツアーに組み入れたいという。「このようなシームレスな導線をなるべく多くの地方空港で実現できるように努力します」と宮崎氏は話す。

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