「これからの時代、単に製品を製造して販売するだけでは、ビジネスの持続可能性は望めません。MaaS(Mobility as a Service)という言葉があるように、モビリティーのメーカーだからできる、さまざまな移動の価値を生み出すことに挑戦し、それをユーザーに提供することも大切な使命です」(井上氏)
考えてみれば本田技研工業は、自動車の分野でもソニーと組んで合弁会社を興し、 「AFEELA」というコンセプトで、従来のクルマという概念を超越した新しい価値を提案するなど、MaaSへの取り組みに積極的だ。
ホンダジェットは1機売れると数億円の売り上げがある。一方、富裕層向けとはいえ、機体のチャータービジネスの事業収益への貢献度は限定的なのではないか。
その点について、井上氏は「ビジネスである以上収益を上げることは大切です。ただ、ホンダジェットで日本の空を民主化したいという、強い思いがあります。単に、ものづくりに終止するのでなく、今回のように、バリューチェーンの川下まで踏み込んだ事業にコミットすることで、製品の需要を喚起することも狙っています」と付け加える。
実際、ホンダジェットは、24年からシェアサービス(チャータービジネス)の開始を予定している。今回のツアー企画も、両者の思惑が合致したことから協業がスタートした。
「海外の富裕層の間で、ホンダジェットのブランドイメージは絶大です。海外のパートナーからも安心・安全という部分で高い評価を得ています。この企画でも、ホンダジェットは大切な要素です」(井上氏)
一口に富裕層といっても、どの階層をターゲットにしているのだろうか。国交省の「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」が21年に公開した報告書では、インバウンドのカード決済額のデータから、富裕層をTear1(300万円以上)とTear2(100万円以上)の2階層に分類している。
今回のツアー企画もこの階層をターゲットとしており、「ツアー代金は、体験の内容により変動しますが、100万〜300万円を予定しています」と宮崎氏は説明する。
ただ、話を聞いているうちに、疑問点も浮かび上がってきた。ホンダジェットがツアーの重要な要素であれば、機体数や搭乗人数(4人)が限られるなかで、ビジネスとしてスケールすることが可能なのだろうか。また、富裕層向けというからには、不足気味といわれる優秀なツアーガイドも一定数確保しなければならない。
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