「クレカ積み立て」月額上限5万→10万円に拡大 tsumiki証券“異例の一手”の真意CEOに突撃(2/3 ページ)

» 2023年09月26日 06時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

実は法令で決まっていた“月間5万円”

 tsumiki証券を追う形で18年10月にクレカ積立をスタートさせたのが楽天証券だ。還元率を当初1%とし、楽天経済圏の強さも生かしたことで、クレカ積立は楽天証券飛躍のけん引役となった。そして、その効果を目の当たりにした他社も相次いでクレカ積立サービスに乗り出した。SBI証券、マネックス証券、auカブコム証券、セゾンポケット、大和コネクト証券などだ。

 しかしいずれも投資可能額は横並びの月額5万円。これは一体なぜか。実は金融商品取扱法では、投資家の保護を目的として、証券会社が投資家に借金をさせて投資させることを禁じている(第44条の2)。クレジットカード支払いは広い意味で借金の一つであり、基本的にはNGだ。

 ただし「投資家の保護に欠けるおそれが少ないと認められるものとして内閣府令で定めるものを除く」と除外条件も定められている。これが、クレカ積立を可能にするとともに、制限を課している法令となっている。

金融商品取引業等に関する内閣府令

(金融商品取引業者における信用の供与を条件とした有価証券の売買の受託等の禁止の例外)

第百四十八条 法第四十四条の二第一項第一号に規定する内閣府令で定めるものは、信用の供与をすることを条件として有価証券の売買の受託等をする行為のうち、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。

  • 一 証票等(証票その他の物又は番号、記号その他の符号をいう。次条第一号イ、第百四十九条の二第一号イ、第百五十条第一号イ及び第二百七十四条第一号において同じ。)を提示し、又は通知した個人から有価証券の売買の受託等をする行為であって、当該個人が当該有価証券の対価に相当する額を二月未満の期間内に一括して支払い、当該額が金融商品取引業者(有価証券等管理業務を行う者に限る。第三号において同じ。)に交付されること。
  • 二 同一人に対する信用の供与が十万円を超えることとならないこと。
  • 三 当該有価証券の売買が累積投資契約(金融商品取引業者が顧客から金銭を預かり、当該金銭を対価としてあらかじめ定めた期日において当該顧客に有価証券を継続的に売り付ける契約であって、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう。)によるものであること。
  • イ 有価証券の買付けの方法として、当該有価証券の種類及び買付けのための預り金の充当方法を定めていること。
  • ロ 預り金の管理の方法として、顧客からの払込金及び顧客が寄託している有価証券の果実並びに償還金の受入れに基づいて発生した金融商品取引業者の預り金を累積投資預り金として他の預り金と区分して経理することを定めていること。
  • ハ 他の顧客又は金融商品取引業者と共同で買い付ける場合には、顧客が買い付けた有価証券につき回記号及び番号が特定されたときに、当該顧客が単独で当該有価証券の所有権を有することが確定することを定めていること。
  • ニ 有価証券の管理の方法として、預託を受けた有価証券(金融商品取引業者と顧客が共有しているものに限る。)が他の有価証券と分別して管理されるものであること。
  • ホ 顧客から申出があったときには解約するものであること。

 「2カ月間で信用の供与が10万円を超えてはいけないと内閣府令で決まっている。積み立ての締め日、支払日を含めると、どうしても重複する期間が出てしまうので、10万円を2で割って月間5万円となっていた」(青木CEO)

 これが、各社横並びでクレカ積立の上限が月額5万円だった理由だ。

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