2021年から始まった値上げラッシュは現在も続いており、まだまだ収まる気配がありません。その対象は日用品や食品のみならず、テーマパークなどのエンターテインメント施設にも及びます。なかでも全国各地の水族館では、電気代などの施設管理コスト、さらには餌代の上昇を背景に、値上げが拡大しています。
相次ぐ水族館の値上げの中で、ひと際目立ったのが高知県の桂浜水族館です。22年11月に実施した値上げでの上昇率はなんと33%。顧客の反感を買いそうな強気の価格設定ですが、意外なことにSNSではポジティブな反応も多いように見受けられます。その成功の要因は何だったのでしょうか。
今回は桂浜水族館を例に、やむを得ない値上げで顧客を離さないために取るべき対策について、さまざまな事例を交えて考察します。
全国各地で水族館の入園料が大きく値上がりしています。「帝国データバンク」が今年3月に発表した調査結果によれば、その上昇幅は遊園地や動物園と比べて最も高く、その背景には光熱費などのエネルギーコストの上昇に加え、餌となる魚代の高騰があるとみられています。
高知県の桂浜水族館も例に違わず22年11月より値上げを実施、大人の入園料は1200円から1600円へと改訂されました。14年の増税後から維持してきた価格は、33%も引き上げられることになりました。
一般的に、大幅な値上げの際には顧客離れが起きるリスクが高まります。顧客は自分の頭の中にある「内的参照価格」を基準にして、商品価格が高いか低いかを判断しているためです。
内的参照価格とは、消費者が商品を購入する際の基準となる価格「参照価格」のうち、過去の経験などから形成された消費者の記憶の中の価格のことを指します。内的参照価格はその人が妥当と考える「値頃感」に近く、実売価格が内的参照価格よりも低い場合、相対的に「安い」と感じ、購入意欲がわきやすくなります。逆に言えば、一定以上離れてしまうと「高すぎる」「安すぎて不安」などといった具合に購入意欲が下がるリスクがあるのです。
今回の桂浜水族館の例では、値上げ率33%と従来価格と値上げ後の差が大きく、これまで1200円で入園券を購入してきた顧客にとっては、「高すぎる」と判断されてもおかしくないラインだと推測されます。
しかしSNSに寄せられた実際の顧客の反応は、意外にもポジティブでした。背景には値上げを伝えるコミュニケーション上の工夫がありました。
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