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どこにいるのか“イネーブルメント人材”! おさえておくべき3つのポイント実践セールス・イネーブルメント(3/3 ページ)

» 2023年09月29日 07時00分 公開
[山下貴宏ITmedia]
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イネーブラー業務の類似経験を持っているか?

 最後に知識について見てみましょう。イネーブルメント施策を企画するためには、その前提となる会社の「事業戦略や営業戦略の理解」が必要です。また、営業目標に対して達成状況を理解したり改善領域を特定したりするためには「指標や数値の理解」が求められます。イネーブルメントチームの顧客は社内の営業組織ですので、「営業の業務の流れ」が理解できていないと適切な支援がおこなえませんし、「自社の製品・サービス」によって顧客への営業アプローチは異なりますので、売り物の理解も必要です。

 最終的にはイネーブルメント施策が営業成果につながっていることを確認したり分析できたりする必要がありますので、自社で活用している「セールステックの使い方(SFA/CRM etc)」も知っている必要があります。セールステックについては、最新のトレンドを把握してさらに自社の業務の効率化につなげることができれば理想的です。

 ここに挙げた知識については、「一般的な知識」というよりも「自社の文脈で使える知識」というのが実際には求められますが、最初から自社の文脈の知識を持っている人は少ないでしょう。

 イネーブラーの採用の場合は、「これらの知識に関わる類似経験を過去に持ったことがあるかどうか」という点で確認するのがいいでしょう。例えば、過去に類似業界で営業企画の経験をしていれば「営業戦略の理解」や「指標/数値の理解」は期待できそうだ、といった具合です。ベースとなる経験があれば、イネーブラーになった後でも比較的短期間で自社文脈の知識の習得が期待できます。

 先ほど、これらの適性を1人の人材が全て兼ね備えているということはないとお伝えしました。私は、マインド、スキル、知識のうち、少なくとも「マインド+スキルの一部」がそろっていれば良いと思っています。イネーブルメント業務に携わりたいという強い思いや好奇心と、業務の一部でも遂行できるスキルがあるのであれば、イネーブラーとして早く成長できます。スキルも知識も後から習得可能ですが、マインドはそうはいきません。

 「スキルと知識」の組み合わせでは、頭でっかちのイネーブラーになりますし、「マインドと知識」の組み合わせでは、イネーブルメント実務遂行のスキルがありませんので、活躍できるまでに時間を要します。採用の際にいずれかの要素の組み合わせを選ぶならば、「マインド+スキルの一部」が備わっているかどうかを見ることをおすすめします。

著者プロフィール:山下 貴宏(やました・たかひろ)

株式会社R-Square & Company 代表取締役社長/共同創業者。

大学卒業後、日本ヒューレット・ パッカードに入社し法人営業を担当。その後、 船井総合研究所を経て、外資系人事コンサルティングファームであるマーサージャパンで人事制度設計、組織人材開発のコンサルティングに従事。その後、セールスフォース・ドットコム入社。セールス・イネーブルメント本部長として、日本および韓国の営業部門全体の人材開発施策、グローバルトレーニングプログラムなどの企画・実行を統括。イネーブルメント部門の規模を4倍に拡張し、グローバルトップの営業生産性を実現。

2019年同社を退社し、セールス・イネーブルメントに特化したスタートアップ、R-Square & Companyを起業。大手企業から中堅企業まで数々の企業のイネーブルメント組織の構築に尽力。イネーブルメント分野の日本での第一人者。

著書に『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』(かんき出版)がある。

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