だが、ファン付きウェアはバッテリー込みで約1万円程度。全児童4000人に配布するには財源が不足していた。そこで市教育委員会が相談を持ち掛けたのが、同市に本社を構えるランドセル製造大手セイバンだった。
タイミング良く、新商品の開発を進めていたこともあり、セイバンは地元自治体からの要望を快諾。市教育委の要望が翌年の夏本番が到来するまでに全児童に配布し終えるというものだったため、開発を急ピッチで進めた。
当初は水に濡らし、振ると冷たくなるタオルや、高い温度で凍るネックリングの素材を活用できないか模索した。ただ、猛暑の環境下では濡らした直後は冷たさを感じる一方、背中を濡らすことで蒸れてしまい、逆に気持ち悪くなってしまう点や、服の上から当ててもと「ひんやり感」を感じづらいといった点が課題となった。最終的に凍らした保冷剤を使用する方向で企画が進んだ。
開発する上では保冷材の軽さにこだわった。下校時まで保冷剤の効果が長くなるにつれて、重量が重くなるためだ。近年、教科書ページ数の増加やタブレット端末の持ち運びなどにより、登下校時の荷物量は増加していることを考慮し、小学生の負担をいかに増やすことなく機能(冷感)を維持するかが開発上の最重要事項となった。
冷却機能はどの程度必要なのか。同社は小学生の通学時間に関する調査を実施。99%の小学生が「通学1時間以内」と判明した。「通学の1時間は確実に快適に冷たく」「その中でも最軽量」ということにこだわり、保冷剤の専門会社とともに通学に適切なサイズを試行錯誤した。完成した商品は、低温やけどや冷え過ぎなど安全性にもこだわった他、保冷剤が溶けた下校時も背中が快適になるように吸水速乾の素材を使用した。
市は、購入費用として847万円を今年度予算に計上。完成した商品はたつの市内の全児童に配布され、好意的な意見が多数寄せられているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング