レースボクサーの開発は、20年のコロナ禍に始まった。世の中に「多様性」という言葉が浸透し、“男らしさ”や“女らしさ”といった従来の価値観にとらわれず、“自分らしさ”を追求する考え方が広まっていたタイミングでもあった。
「男性がスキンケアや化粧をして、美しさにこだわるような市場ができてきたなと。でも男性用下着にはデザイン性を追求したものが、まだないよねという話から開発が始まりました。ワコールの強みが最大限に発揮できるものは何かと考え、レースにたどりつきました」
美しさを求める男性が増加する一方で、三井氏いわく、百貨店で販売されている男性用下着に至っては事情が違うようだ。
「男性用下着は着用する本人ではなく、女性が購入するケースが多いんです。女性が自身の買い物のついでに夫の分も購入する、あるいは女性がプレゼントとして購入するのだろうと。こだわりを持って自身で下着を選ぶ男性は少ないかもしれませんが、そのような層は一定数いるはずですし、そういった文化をつくりたいと考えました」
ワコールメンでは、過去にもレースの下着を販売した実績がある。少数、かつ大々的にPRなどをしていなかったためかヒットはしなかったが、一定の需要はあると考えていた。また、これまでに販売したボクサーパンツにおいて、「花柄」の売り上げが無地より好調であることも企画のヒントになった。
ちなみにレースボクサーの発案者は女性デザイナーであり、企画メンバーは全員女性となる。人員配置もあるが、「男性用だから男性がデザインする」という考え方ではないそうだ。
機能性を追求したレースの下着を大々的に売り出したらどうなるのか。予測しきれないが、まずは「こだわりを持って自身で下着を選ぶ層」に向けて、ワコールの技術力が生きる商品をつくろうと開発をスタート。約1年の期間をかけ、妥協のない品質に仕上げた。
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