「頑張っているのに、なんで売れないのだろう」と悩む営業は多い。売れない営業には、必ず何らかの「原因」がある。どうしたら「売れる営業」になれるのかエッジコネクションの大村康雄代表が、事例を基にQA形式で解説する。
Q: 見込み客とのMTGにて、予算感、課題、決裁フローなどなど、提案に必要な情報をしっかり聴き込んで、それに基づいて提案書を作っています。ですが、必要な情報を網羅しているはずなのに、相手の反応が良くないことも多く、成約につながりません。
これは悪い相手に出会ってしまっただけでしょうか? それとも、こちらで対策ができることなのでしょうか?
「完璧なヒアリングから情報を収集し、それに基づいて提案を組んだはずなのに決まらない」――新人だけではなく、中堅クラスの営業パーソンにもよくある悩みです。
ここで重要なことは「お客さま自身も自分がどこに困っているのか正確には分かっていない」と認識することです。
こんなシチュエーションを想定してみましょう。とあるお客さまがホームセンターに来店しました。そして、このように店員さんに訪ねました。
客: 電動ドリルはどこにありますか?
店員: 大きさはどれくらいのものを想定されてますか? 価格や重さはどれくらいが良いですか?
客はこれらの質問に答えた結果、返答内容にピッタリの電動ドリルを紹介されました。ですが、悩んだ結果「ちょっともう少し考えます」と言い残し、帰って行ってしまいました。
別の日、再度来店したその客は別の店員に話しかけました。
客: 電動ドリルはどこにありますか?
店員: なぜ、電動ドリルが欲しいんですか?
客: ソファの足が折れてしまって、何度かネジで止めたのですが、それでも弱いみたいなので電動ドリルで穴を開けて棒を通そうかなと思ってるんです。
店員: それでしたら、最近、木材をとても強力にくっつける接着剤が出たんです。それだったら作業も簡単で良いと思いますが、そちらをご紹介しましょうか?
後はご想像の通り、お客さまはその接着剤を購入して帰りました。これが、ヒアリングの質の違いによる成約率の違いです。
みなさんは、以下のようなヒアリングをしていないでしょうか? このようなヒアリングを、私は“尋問ヒアリング”と呼んでいます。
「今、お付き合いの業者とはいつくらいからお付き合いなのでしょうか?」
→お客さま返答
「ありがとうございます。どのような点が改善されれば良いとお考えですか?」
→お客さま返答
「ありがとうございます。現在はどんな業務を任せているのでしょうか?」
→お客さま返答
「ありがとうございます。おいくら位でご発注されていますか?」
→お客さま返答
「ありがとうございます。業者の変更は〇〇様だけでお決めになられますでしょうか?
→お客さま返答
「ありがとうございます……(以下、続く)」
この尋問ヒアリングは、以下のように変えることができます。
「今、お付き合いの業者とはいつくらいからお付き合いなのでしょうか?」
→お客さま返答
「2年前からなんですね。長いお付き合いにほころびが出てる状況かと思いますが、どのような点が改善されれば良いとお考えですか?」
→お客さま返答
「担当者がコロコロかわることなんですね。それは先方には伝えてないのでしょうか?」
→お客さま返答
「伝えても担当者がコロコロ変わるし、その上の上司が取締役なので時間を作ってくれないんですね。それは大変ですね。そうしましたら、目の前の担当者とその上司までもが顔が見えるお付き合いができることがいちばん重要なことなのでしょうか?」
→お客さま返答
「ありがとうございます。かしこまりました。当社ではそのような体制を組むことができますので、ぜひご提案させてください。そのために、いくつか伺って良いでしょうか?
→提案を組むために必要なことをヒアリング(尋問ヒアリングスタート)
このように、お客さまと一緒に課題に迫っていくヒアリングを、私は“カウンセリングヒアリング”と呼んでいます。そして、カウンセリングヒアリングを通して真の課題にたどり着いた場合、お客さまと営業担当者は課題に一緒に向き合う同士になり、お客さまもいろいろなことを自発的に尋ねてくれます。つまり、尋問ヒアリングにて必要な情報を聞き出せるようになります。
「聴き込めているはずなのに、なぜか毎回成約しない」――そう感じている営業担当者は、ほぼ間違いなく尋問ヒアリングになっています。尋問ヒアリングでは、お客さまは特に深く考えることもなく現状を伝えるだけになり、裏側の実態は営業担当者に見えてきません。また、一問一答で聞いているだけなので、場合によっては、そこにウソが紛れ込んでいたとしても、営業担当者が見抜くことはほぼ不可能でしょう。
よって、ぜひカウンセリングヒアリングを身に着けましょう。
カウンセリングヒアリングのコツは、お客さまの返答に対し「そのような状況であれば、ご自身で対処できましたよね? それを阻んだものは何だったのでしょうか?」などと、課題を解決できるスキルが先方にはあるというスタンスで、課題観を聞いていくことです。そのスタンスを維持することで、相手も嫌な気持ちになることなく、どんどん裏側の実態を説明してくれるようになります。
ぜひ、上記の例を参考にカウンセリングヒアリングのイメージを膨らませ、お客さまの真の課題を捉えた提案をしていきましょう。
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