パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。
さる9月の終盤、政府はいわゆる「年収の壁」問題の解消に向けた施策を発表した。主な対象は2つの「壁」である。
「106万円の壁」(従業員101人以上の企業に勤めるパート従業者に社会保険の納付義務が発生する問題)については、(賃上げや手当の支給など)手取り額の減少を防ぐ措置を講じた企業に対して、1人あたり最大50万円を助成するとしている。
保険料負担を軽くするために企業が出す「社会保険適用促進手当」は、保険料算定の際に標準報酬などから除外し、労使ともに負担を軽減できるようにする。
また、「130万円の壁」(従業員100人未満の企業等で働くパート従業者が配偶者の扶養から外れる問題)については、これを越えても健康保険組合等の判断で連続2年間は扶養に留まることが出来るようになる。
特に慢性的な人手不足にある流通業やサービス業にとって、年収が106万円に達すると125万円を越えない限り「たくさん働くと損する」制度の改善は、長年にわたって指摘されてきた課題であった。
この10月から実施される最低賃金の引き上げが更なる労働時間調整につながりかねない、との懸念も強く指摘されていた。企業側から見ても、「働く動機づけのために時給を上げると、かえって『働き止め』を招く」ことになるという皮肉な構造があるのだ。
「106万円の壁」を意識して労働時間を抑制している可能性があるパート従業者は約45万人と厚生労働省は推計している(第7回社会保障審議会年金部会資料)。決して小さくないが、2024年10月からは法改正により「特定適用事業所」の基準が51人以上の事業所に引き下げられるため、このままでは「106万円の壁」のせいで労働時間を抑制するパート従業者は約60万人にまで拡大すると懸念されていたのだ。
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