今回の措置はもっと働きたいパート従業者にとって朗報であり、現場の人手不足の緩和にも一定の効果があるだろう。それは景気の下支えにも貢献するはずだし、限定的ではあるが年金財政の改善にも役立つ。
もちろん、諸手を挙げて賞賛できるものではない。「106万円の壁」に対する助成金は2026年までの暫定的措置となっており、「社会保険適用促進手当」の標準報酬などからの除外も最大2年間の措置とされる。「130万円の壁」の対策も「連続2年間は扶養にとどまることが出来る」という時限的なものであって、いずれも緊急措置に過ぎない。
また、パート従業員を雇用している企業からすれば、将来の負担増は決して軽視できるものではない。とはいえ先に触れた「時給を上げると、かえって『働き止め』を招く」という皮肉な構造は暫定的に改善される。
しかし、この問題の本質は「第3号被保険者制度」そのものの持つ不公平さにある。
この制度は、戦後の日本経済を支えてきた中流世帯の専業主婦が無年金化することを防ぐための施策として1986年に導入されたものである。
しかし被扶養者であることの “お得感”が強過ぎて、結果的に日本での女性の社会参加を大幅に遅らせる大きな要因になってしまったのだ。「男が外で働き、女は家を守る」という、他の先進諸国からみると前近代的な価値観をこの国の昭和世代に深く植え付けてきたことは間違いなく、それが日本企業や行政の同質化と発想の貧困さにも深刻な影響をもたらしてきた、と多くの識者から指摘されている。
そもそも自営業者の配偶者には適用されないのでアンフェアだという指摘は昔からあった。当然ながら独身者やフルタイムの共働き世帯にも恩恵はまったくない。それどころか保険料を納めていない主婦の年金原資をなぜ自分たちが負担せねばならないのか、といった不公平感の種にもなっている。まったくその通りだ。
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