「オワコン」から「エモい」へ 無印良品の団地プロジェクトが若年層に支持されるワケ「古くて新しい」が魅力に(2/5 ページ)

» 2023年10月27日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

 冒頭で紹介したように、団地の再評価を7〜8年前に私に教えてくれたのは、カルチャースタディーズ研究所代表の三浦展さんです。三浦さんは当時「都心の郊外化と郊外の都市化」というテーマを掲げて、これからの街づくり・住まいはどうなるかを考えていらっしゃいました。

 昨今「都心」と呼ばれるような街はどこも似たようなチェーン店が出店し、似たような街づくりになり、将来的には郊外のような街の構成になっていくのではないか。また郊外では、いずれ都心のような店や場所ができるようになり、都市化が進むようになっていくのではないか。そうして、次第にどちらも似たような街になっていく――という話を三浦さんがされていたと記憶しています。

 このような中で、まだあまり手がつけられていなかったのが郊外の団地でした。団地はある意味、時代の流れに忘れ去られていた“聖域”といえるでしょう。存在は知っていながら、多くの人が手を出しにくい場所でした。固定化され画一化された団地の古いイメージだけでなく、居住しているのは高齢者がほとんど。新たな取り組みの余地がないともされていました。だからこそ、この資産を活用していったら面白いのではないかと考えたのが良品計画です。

 では、良品計画はどのような取り組みをしてきたのでしょうか。MUJI HOUSEのリノベーション事業部部長であり「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」の立ち上げメンバーでもある豊田輝人さんに話を聞きました。

意外と多かった「リノベした団地に住みたい」ニーズ

 団地リノベーションプロジェクトは2012年にスタートしています。13年から募集を開始し、10年間でおよそ60団地・1200戸ほどの空間をリノベーションしました。「新千里西町」(大阪府豊中市)、「泉北茶山台二丁」(大阪府堺市)、「リバーサイドしろきた」(大阪市)の3団地から始まり、東京・名古屋・福岡へとエリアを広げていきました。対象はURが管理運営している団地です。企画設計・PRを良品計画が担当してデザイン料を受け取り、UR側で依頼した工務店が仕上げて客に賃貸するという形式をとっています。

 現在、良品計画では4人が専任で同プロジェクトを進行しているといいます。もともと良品計画が団地を面白いと思って研究し始めたのが10年ごろ。当時は、一部の団地でリノベーションが始まり出した時期でした。その後、URから団地のリノベーションについて相談があり、実際にニーズがあるものなのかを調査。良品計画の顧客を対象にWebアンケートを実施しました。すると61%が「リノベーション後の古い団地に住んでみたい」と回答したのです。

6割が「リノベ後の古い団地に住んでみたい」と回答した(出所: 良品計画「団地について」第3期 第5回アンケート

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