「オワコン」から「エモい」へ 無印良品の団地プロジェクトが若年層に支持されるワケ「古くて新しい」が魅力に(3/5 ページ)

» 2023年10月27日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

 調査からは「間取りを自由にできると良い」「住人同士の地域イベントがあると良い」「お店や仕事場として使えると良い」「風呂やキッチンをグレードの高いものにしてほしい」といった具体的なニーズも得られました。チャンスと捉えた良品計画は、団地のリノベーションプロジェクトを立ち上げます。

 団地は建設から40年以上たっているような古い建物も多く、エレベーターすらないところがほとんどです。一方で、若い人にとってはそうした点は欠点にはならず、少し手を入れるだけで魅力的な物件になるのではないか――という読みが良品計画にはあったようです。

団地が抱えていた課題(作成:筆者)
UR都市機構の「百草(もぐさ)団地」(撮影:筆者)。団地の上層階が人気なのが分かる眺望の良さだ

 実は、個々の点を見ると、団地には魅力のあるインフラが備わってもいます。シンプルなつくりでありながら、陽当たり・風通し・自然環境などのポテンシャルが高く、豊田さんは「URの物件は、設計時に『1日何時間、陽当たりがあるか』などの詳細を考えてつくっているものが多いのです」と話します。「そうした魅力が若い人には伝わっていないのではないか」「特にシンプルな暮らしを求める無印ファンに団地の魅力を伝えれば、彼らのライフスタイルにハマるのではないか」と考えたそうです。

 そこで、団地リノベーションプロジェクトでは「こわしすぎずつくりすぎないことで、賃貸住宅でありながら住まい手が自由に編集できる余地を残し、『借りて住む』ことの新しい価値付けの可能性」(MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト公式Webサイトから引用)を考えて、無印ファンに喜んでもらえるように取り組みを進めていきました。

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