「オワコン」から「エモい」へ 無印良品の団地プロジェクトが若年層に支持されるワケ「古くて新しい」が魅力に(5/5 ページ)

» 2023年10月27日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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 現在、団地リノベーションプロジェクトはさらに進化し「MUJI×UR 団地まるごとリノベーションプロジェクト」と、団地をまるごとリノベーションしていく企画として進行中です。すでに4つの団地で動いており、千葉市の花見川団地では千葉市と一緒になって取り組んでいます。団地内で自動運転バスを期間限定で走らせたり、団地周辺に住んでいる人たちも巻き込んだコミュニティ形成を進めたりと、新しい団地を中心にコミュニティビジネスへ発展させようとしています。

「シンプル族」の特徴(書籍『シンプル族の反乱』を参照に筆者が作成)

 これらの取り組みに共通するのは「お客さま巻き込み型」であることです。シンプル族の特徴にあるように、リノベーションした団地に住みたいと考えるのは、自分の手を加えて毎日の基本的な生活を大事にする人たちです。積極的に隣人と関わり、生活をより楽しもうと考える層をうまく取り込んでいるといえるでしょう。

花見川団地の一室(出所:MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト公式Webサイト、以下同)
千代が丘団地(名古屋市)の一室

 これまでの取り組みにより、家具の購入につながったり、新たなリノベーションにつながったりといった相乗効果も出ています。長期的なビジネスとして、新しいコミュニティをつくり出し、売り上げにもつながり、同時に社会課題を解決するという重要な事業になっていると感じます。

水草団地(名古屋市)の一室
アルビス五月ヶ丘団地(大阪府池田市)の一室

 団地に新たな若年層が住み始め、新しい家族の輪がこれから広がっていく――今回紹介した取り組みは、こうした期待を抱かせます。かつて一世を風靡(ふうび)した団地は「古くて新しい」、そしてエモいライフスタイルとして一定の広がりがありそうです。大切な社会の資産を次の世代へと継承していく事業モデルとしても、注目です。

落合団地(神戸市)の一室
中登美第3団地(奈良市)の一室

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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