「これからは団地の存在が見直されると思う」――そんな話を、今から7〜8年ほど前に聞きました。東京の郊外には、1000世帯以上が暮らす“マンモス団地”がいくつもあります。
昨今は、団地の部屋をリノベーションして新たな団地住まいを楽しむ人たちが増えているそうです。果たして、団地の「今」はどうなっているのでしょうか。消費トレンドを追いかけ、小売り・サービス業のコンサルティングを30年以上にわたり続けているムガマエ代表の経営コンサルタント、岩崎剛幸が分析していきます。
そもそも団地とは、一般的に住宅の集合体を指します。住宅を計画的に1カ所に集めて建設した地区全体のことを団地と呼ぶことが多いようです。語源は、都市再生機構(UR都市機構)の前身に当たる「日本住宅公団」のさらに前身である「住宅営団」までさかのぼります。住宅営団が1940年代に進めていたプロジェクト「労務者向集団住宅地計画」の「集団住宅地」が略され「団地」となったようです。
その後、50年代半ばに日本住宅公団によって建設が始まった公団住宅は、近代的なものとして憧れの的でした。そこから東京郊外には、都心へ通勤するサラリーマン家庭のため多数の住居エリアが開発されてきました。そのような場所はベッドタウンと呼ばれます。「ベッド」+「タウン」、つまり「寝るためだけに帰る街」という意味です。働き詰めの高度経済成長期ならではの的を射たネーミングです。
登場した当初の団地を、今でいう「タワマン」のような存在だったと表現する人もいます。それだけ新たな暮らしの要素を団地は備えていたのでしょう。ダイニングキッチン中心の間取り、4階(あるいは5階)建てのコンクリートの建物。一つひとつの建物の間隔も広く、敷地内に公園が整っていることも多いですし、住んでいるのは都心の企業に通うサラリーマン。会社の成長のため、そして日本の成長のために24時間、体を張って頑張っていたサラリーマン家庭の住宅――それが団地でした。
しかし、団地で生まれ育った子どもたちは就職すると団地を出て、都心に住宅を借りたり、別の地域で子育てをするようになったりと、団地から次第に人がいなくなっていきました。やがて、団地を中心としたいわゆるニュータウンは、高齢者が多く暮らすエリアとしてゴーストタウン化が嘆かれるようになっていったのです。国土交通省の調査によると、住宅団地の問題意識として「高齢者が多い」「空き家が多い」「交通機能低下」などが挙がっています。また、コミュニティーの弱体化も問題といえるでしょう。
このような課題を抱えてきた団地ですが、最近になって見直されて始めています。なんでもZ世代の若者たちからすると、団地は「エモい」とか。若者が住みたくなるようなリノベーションをしたものが続々と生まれていることも背景にあるようです。
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